薪ストーブを利用した調理法には、いろんな選択があり得ます。炉内にするか、天板にするか、から始まって、それぞれ「裸(むき出し)」で加熱しても良いし、何かしらの調理器具(鍋、鉄板など)を使っても良い。
けれども、薪ストーブの導入設置そのものが、置かれた条件(地理的な条件、家の構造、コスト条件、薪の調達しやすさ等々)を踏まえながら、「本当に幸せになれるように」合理的に突き詰めれば、通常、極めて細い「これしかない」という「唯一の最適解」になってしまうように……
薪ストーブ調理も、調理器具や加熱原理についての知識をもとに、置かれた状況と要求事項を念頭に、その中で、いちばん美味しくなるように作ろうと真剣に考えれば、「答え」は一つしかなくなってしまうのです。
冒頭写真は、2月11日のイベントでの一コマ。この時の「置かれた状況」は、イベント進行上、時間が極めて限られる中で、「要求事項」は20人分もの大量の鶏もも肉を、極めてジューシーに、しっかりと火を通すことでした。焦げ目もあればなお美味しいですが必須ではありません。短時間、大量が必須。薪ストーブの火力を最大くらいまで上げるのはもちろんとして、そこで、出来る限り美味しいもので提供するには……
答えは一択。高温の天板の熱を、速やかに食材に伝える「アルミ製」で、しかも底面だけでなく全体から加熱する「包熱効果」の最も高い「オーブンタイプ」の分厚い鍋、これしかありませんでした。実際に使われたのは、アサヒ軽金属の「ワイドオーブン」という製品。写真は、本体に加えて、「蓋」も薪ストーブの天板で熱々に予熱した状態で、本体の中に大量の肉を放り込んだところです!
成果はバッチリ。子供が大喜びして、何もつけなくても何度もお代わりに来るような、ジューシーで美味しい鶏もも肉が焼けたわけです♪
毎回長くて申し訳ないですが、前置きはここまでとして、ここから前回の続きです。
一連のパーティーメニューの中で、豚肉スペアリブを焼くことになった私は、まず、肉汁を閉じ込めつつ、香ばしさを焦げ目で表現するために、炉内料理、燠火の最後の火力で表面だけを焼き上げたわけですが……
aiken-makiss.hatenablog.com で、完全に火を通す必要があったわけです。しかもジューシーに。その場合、上記イベントと同様に、やっぱりアルミ製の包熱効果の高い調理器具の一択となります(ステンレスにアルミを挟んだ多層鍋でも、短時間さはアルミに負けますが良いです)。改めて説明しますと
- 鉄の鍋は、熱伝導率が悪い(アルミに比べると3分の1しかない)ので、熱が伝わるのにアルミよりも時間がかかる。包熱効果も側面熱伝導率が悪いために均一になるには時間がかかりすぎ、普通は包熱効果が発揮される前に、底面だけが焦げてしまう。つまり上面は冷たいままなためにジューシーにはなりづらい。
- セラミック系の鍋は、さらに熱伝導率が悪い(鉄に比べて80分の1程度)一方で、蓄熱効果が高い。逆に食材には全体からやわらかく熱が伝わり、「じっくり加熱」に最適な余熱効果も極めて高いが、薪ストーブの天板が熱源ではマイルド過ぎて、時間がいくらあっても足りない。
- 銅の鍋を使うと、そもそも包熱効果がしっかり期待できる「分厚い鍋」がまず存在しないし、あと熱伝導率が高すぎて(アルミの1.6倍)、汁気のない状態では、肉の冷たさが鍋の金属表面を冷やしてしまい、逆に焦げ付く(銅製の「しゃぶしゃぶ鍋」は多いのに、「すき焼き鍋」がほとんどない理由)。
そうなんです。結局は、薪ストーブの天板で、汁気のない(少ない)無水料理ないし焼き物をしようとすると、我が家では、もっぱら分厚いアルミの鍋(フライパン系含む)ばかりが登場することになります。当ブログ、最頻出のアサヒ軽金属による「スペースパン」。ブリの切り身なんかをジューシーに焼くにも大活躍です♪
さて、前回紹介した、私に要求された一連のパーティーメニューはこれだけありました。
- 豚肉スペアリブ
- 牛ばら焼肉
- 牛やわらかステーキ
- 鶏肉ステーキ
- しいたけ
- 長ネギ
結局、このうち、「豚肉スペアリブ」は熾火&アルミ製オーブン鍋の天板加熱で、その天板加熱と同時に、しいたけを、蓋をしたアルミ製フライパンの包熱効果を生かして無水調理にしました。味付けとして、みりん&醤油を加えて、最後にちょっと贅沢なダシ粉を振りかけたら完璧でした。脂っこい料理が多かったので良い箸休めです♪
aiken-makiss.hatenablog.com で、甘味のあるヌメりが、思いっきり、焦げ付く長ネギは、そのワイルドな焼き焼き感を演出するためにも、天板に鉄鍋を載せても良かったのですが……
aiken-makiss.hatenablog.com ここは、ちょっと焦げ目も付けましたが、テフロンコーティングされたアルミ製の鍋である「スペースパン」で、しょうゆを垂らしながら、鉄板焼きよりは少し優しく仕上げました。しっかり火が通っていますので甘くてジューシーなことでは遜色ありませんし、鍋への焦げ付きも、充分許容の範囲内です。
この長ネギも、豚肉スペアリブとしいたけと同時に仕上げました。広大な面積を誇るMD80Ⅱならではのワザです。
ただ、長ネギで鉄鍋を選択しなかった最大の理由ですが、この日の一連の天板料理では、何と言っても「短時間」が一番重要でした。鉄製の鍋に比べたら、アルミ製の鍋は「圧倒的に早い」ですし、そもそも他のメニューと同時に完了させる必要がありました。
なぜ、そんなにも「短時間」が重要だったかというと、理由は二つありました。まず、このパーティーメニューの日(休日)の薪ストーブへの出力の要求はちょっと複雑で……
- 昼間から薪ストーブがついており、夕方の時点である程度暖まっていた。
- 夕方のパーティーメニューの開始を「燠火料理」から始めて、長時間費やしたので部屋が冷えてしまい、いったん暖房として炎を上げる必要があったが、それほど強く部屋を暖める必要まではなかった。
- しかし天板料理としては、中までしっかり火を通す必要があった。
そこで私が何をしたかと言いますと、燃えやすくて、火力が上がりやすく、短時間で熾火になる薪を選んで使いました。部屋の温度をちょうどにしながら、しっかり火の通った料理を提供していくには、モキ製作所が最も得意とする一気の強火&天板&アルミ製鍋(フライパン)「これしかない」。
そして、もう一つの理由は……読んでてお疲れかもしれませんが、まだ、このメニューが最後に残っていたのです。
- 牛やわらかステーキ
この、当日のメインディッシュといえる最大の贅沢メニューを、ただ、天板で焼くなんて、わたくし、そんなことはいたしません(笑)表面はしっかり香ばしく焼き付けて、でも、中味はレアに近く……
薪ストーブ調理の醍醐味、「薪ストーブならでは」の料理は、最後の最後は、やっぱり炉内調理に戻ります。焼き芋も、焼き魚も、天板でもかなり遜色なく焼き上がるのですが、やっぱり「ベスト」は炉内料理です。
すなわち、薪ストーブには、暖房としてちょっと働いてもらいながら、しっかり火を通すものを天板&アルミ製鍋で仕上げたら、速やかに燠火の状態に戻ってもらう必要がありました。メインディッシュの牛やわらかステーキを、最高に美味しく焼き上げるために。
……それにしても、たかが一夜のパーティーメニューを薪ストーブで仕上げるというだけで、この凄まじいまでの「理屈」の多さ……これって、読んでいるほうとしてはイヤにならないか、とっても心配です(笑)
「あら」さん、いかがでしょうか?楽しく、お読み頂いてますか?あるいは、さすがにちょっとお辛いでしょうか??よろしければコメントにて、率直なところを是非♪♪
そういうわけで、次回は、もう一度、炉内料理、燠火を使った美味しいステーキの焼き方を題材に、今回のように「燃えやすい薪による強い燠火」を基調とした場合の「変法」について改めてご紹介します。
……「どこが超簡単やねん」という真っ当なご意見はさておき、それでは次回も乞うご期待~~♪