突然で恐縮ですが、調理に「本質問題」があるとすれば、それは何だと思いますか?素材の選択?下ごしらえ?温度?味付け?……
「料理の味は調理器具次第」を信条に、人生の大部分を調理器具の探求に捧げ、「……あなたは、いったい、いくつ鍋を揃えたら気が済むのですか?!」と妻に泣かれている(ごめんなさい)私、大屋ですが、この「本質問題」については、一つの確信をもっています。
「いかにうまく、中まで火を通すか」
調理法には、直火焼きから、鉄板焼き、煮る、蒸す、揚げる、圧力調理……などなど、たくさんありますが、結局はこの本質問題に帰着するのではないでしょうか?
そこで、また、私には確信している「答え」があります。遠赤外線こそ、食材の中に火を通すために最も優れた方法であるということです。中まで火を通すという意味では代表的な調理方法である電子レンジについては、私、言いたいこともいっぱいあるのですが……ここでは我慢します(笑)
なお、暖房においても、輻射熱、つまり遠赤外線が、熱を伝えるために最も優れた方法です。それについては当事業Webサイトでも解説しております。
さて、この遠赤外線による加熱についての詳しい理屈は、私が某国立大学の工学部化学科の学生だった頃に聴いて、当時の衝撃を今も覚えているような科学のお話になるので、ここでは省略しますが……もし、科学に強いというか、興味がおありでしたら、こちらの記事が、電磁波である遠赤外線の生体における波長吸収特性図まで掲載していて良いです。引用しておきます。
ともあれ、私が、当ブログで、ひたすら言いたいのは、調理にせよ、暖房にせよ、遠赤外線こそ、薪ストーブの存在価値そのものであり、それを積極的に活用しない薪ストーブ生活なんて……私に言わせれば「は??何、寝言言ってやがるんだ?!」であり、そんなノウハウで薪ストーブの専門家を名乗ろうものなら、「一昨日来やがれ!」というくらいの気持ちです。こちらの記事(笑)
で、ずいぶん前置きが長くなりましたが、「料理の味は調理器具次第」と信じ、家じゅうを鍋であふれさせて妻に泣かれる私が、お肉を美味しく焼こうとするときには、必ずというほど頼みにするのが、耐熱セラミック製の鍋なのです。
私が、なぜ、ここまで耐熱セラミックの鍋を頼りにするかというと、その理由が、セラミック材料は「良い遠赤外線を」「効率よく」発生するからなのです。
その証拠に、岩盤浴もわかりやすい例ですか、セラミックはヒーターの本体(加熱される部分)として使われたり、調理ではガスコンロでお餅を焼くための網だとかにコーティングされていますね??要は、輻射熱を発生させる材料として優れているのです。
つまり、セラミックは、ポカポカ、こんがりの発生源♪ だから、石焼き芋を自宅で作る場合なんか、金属製の鍋の中に、わざわざ石(本質的にセラミックと同じ)を入れて、焼いたりするわけです。先ほどの焼き芋記事にも実践例のリンクを紹介してあります。
ここまでまとめますと、燠火(炭火)以外の「焼き物」というか、素材が水に浸かっていない状態の調理法では、セラミック鍋最高♪……やっと、ここで、今日のテーマにつながりはじめましたね。疲れたでしょう?(笑)
そこで、冒頭写真!!国産の美味しい鶏もも肉を焼いたところ。使われたのは、もちろん耐熱セラミック鍋です。別の鶏もも肉ですが、作り方を写真でご紹介♪ 鍋にもも肉を、ただ並べて……
薪ストーブの燠火を、こんなふうに強いめに作っておいて、網でも何でも良いのですが、ここでは五徳、鍋を載せる台を熾火の上に用意して……
炉内の高温を、耐熱セラミック鍋を通すことで、穏やかな遠赤外線に換えて、お肉を包み込むようにじっくり加熱するのです。ガラス扉は閉めておきます。
あとは、10分もしないうちに、「ジュージュー♪」という音と、美味しそうな匂いがしてきますので(気流は煙突方向に流れるので、匂いを嗅ぐの、すごく難しいですが!)、出来上がりです♪
この適度な焦げ加減と、ふっくら感が、耐熱セラミックの鍋を選択する理由で、金属製、例えば鉄の鍋ではどうなの?ダッチオーブンとかは?というと……ダメとまでは言いませんが、少し落ちる感じです。
鉄は、遠赤外線を発生させる素材としては、セラミックにやや負けるので(状態によりますが、ざっくり3分の1くらい?)、ふっくら感で耐熱セラミックにやや負けることと……(アルミなんかは、実はかなり負けます。このあたり、詳しく知りたい方は、長崎県窯業技術センター平成25年度研究報告「各種素材の遠赤外線放射率の特徴」がオススメです。今回は論文引用ばっかりですね(笑))、あともう一つ問題があって、鉄では熱が伝わり過ぎるのです。薪ストーブの炉内調理では。
要は、鉄だと、炉内の高温が伝わり過ぎて、下手したら真っ黒に焦げちゃうのですね。鉄板焼き過ぎ状態。逆に言えば、それだけ熱が伝えやすいので、薪ストーブでは、天板でジュージュー焼くような使い方では、我が家でも鉄鍋、大活躍です♪ こちらの記事。
【追記】……と、思っていたのですが、私、この動画を見て、自分自身の浅はかさを知りました。鉄製の鍋底と、食材を接触させなければ(食材を中空で浮かせれば)良いのです!!そうすれば、ダッチオーブンなど鋳鉄系の鍋(熱を遠赤外線に変換することが可能)を使って、燠火さえ量的に贅沢にあれば、上面にも炭を置くことで、全体から遠赤外線で熱が食材に加わって、理想的に焼くことができます!ですので、当記事は、「鍋の中に直接食材を置く場合」に限定したものとご認識下さい。
私、色々試行錯誤しながら、研究に研究を重ねて(?)至った結論があるのですが……鉄と、セラミックつまり陶器系の鍋って、薪ストーブ調理では、本当は、こうして使い分けた方が良いと思うのですよ。陶器系の調理器具は、炉内調理においてベストですが、逆に天板調理では、鉄の調理器具の方がずっと実用的だと思います。
その理由は、土鍋など陶器系素材と鉄の熱伝導率の圧倒的な差を考えればわかります。こちらの記事にも、数字としてどのくらい違うかを書いておきましたが……(「80」と「1」の違いです。ちなみに)
もう圧倒的に、セラミック、陶器系素材は、鉄に比べて熱が伝わりにくいわけです。鉄鍋なら充分調理に向いている温度の天板に土鍋を置いたって、土鍋では熱伝導率が低すぎて充分な温度にならないので、もっとガンガンに焚いていないと使えないのです。
秋口の、こちらの記事では「厳冬期にはやりたい」と書きましたが、厳冬期の今、暖房のための実際の運用状況を見ている限り、我が家では、このプロジェクトは夢物語に終わりそうです。残念。
あと、陶器系の鍋って、熱伝導率的に、どうしても、鉄に比べて火当たりが不均一になってしまうのです。例えば、これ、我が家でご飯を炊くためにガスコンロで使っている土鍋、今はなき北勢陶業所による「キャセアース」の写真です。非常に高品質な超耐熱セラミックだからだと思うのですが、土鍋にしては火当たりもすごくやわらかくて均一で、ご飯もすごく美味しく炊けるのですが、それでも……
明らかに、炎のあたる部分「だけ」、鍋本体に焦げの浸透が発生しているのわかりますか??同じ鍋でご飯を炊いても、鉄やアルミ系の鍋なら、ここまでにはなりません(多層でないステンレスはちょっとなるかも)。このように陶器系の鍋は、高温の熱源に近い部分だけが高温になりやすいのです。熱をゆっくり穏やかに放出するという長所の裏返しとしての弱点です。
その陶器系の鍋の弱点が、薪ストーブの炉内なら、見事に解消されるわけです!だって、なぜなら薪ストーブの炉内は、基本的に全体が高温なので。火当たりは均一になるし、炉内の高温が、程よい焦げ目を作る温度に変換されて、遠赤外線で、じんわり、中まで火が通るので、すごく美味しく仕上がります!!!
……ただ、美味しい肉を食うだけなのに、こんないっぱい、理屈を聴かされなきゃいけないなんて……すごく疲れますよね。ええ、妻には、これまた「そんな、鍋の材質によって用途を変えてくれって言われても……そんなややこしいの覚えられないよ」と、しょっちゅう嘆かれております(笑)ごめんなさい。
でもね、本当に、美味しいのですよ??炉内に仕掛けた耐熱セラミック鍋で焼いたお肉って。この耐熱セラミック鍋の力だけを頼りに、超簡単に一大勝負を仕掛けたレポートと、今、手に入る耐熱セラミック鍋について紹介した記事がこちらです♪
……こんな学術論文みたいな長文ブログ、どなたが読んでくださるのでしょうか??(笑)でも、本当に美味しい料理を、超簡単に作るには……
いやー、調理器具って、ほんっとうに、大事なもんですね~~~!!(映画評論家 故 水野晴郎氏の口調で)
「理論」と言わないところがポイントです♪ 「料理の味は調理器具次第」。「薪ストーブは遠赤外線を活かしてナンボ」に次ぐ、当ブログのメインテーマです(笑)
「お肉には、耐熱セラミック鍋を使った炉内調理が良いです」と、さらっと書くつもりが、それだと、あまり芸がないな、と思って、最初に理論に踏み込んでしまったもんですから……思わず、引用いっぱい、とっても本格的になってしまいました。でも、知っておくと、何かと応用も効くんじゃないかと思うんですよ??
そんなわけで、とっても役に立つ(?)当ブログ、いかがでしたでしょうか?明日から本当に寒くなりますので、お身体には気を付けて。
次回は、この話の流れを汲んで……実は、薪ストーブといえば〇〇というほどメジャーなメニュー、ローストチキンは前触れましたが、まだ触れていないあのメニュー、すごく奥が深い話ですのでぜひ触れたいのですが……ここしばらく、長い話が続いて、皆さん、疲れましたよねぇ?(笑)
次回は、短くて、簡単なお話にしようと思います。たぶん(笑)乞うご期待♪