昨日の記事で、薪ストーブ調理に適した鍋としては、鉄製のものは、限られた条件と目的の場合にベストになるのでは?と、書いたところなのですが……
こういう「汎用性の低い調理道具」というのは、本当に、特定の目的だと「他には考えられない、替えが効かない」というくらいに存在価値を発揮することがあるのですね?人間なんかも実は一緒なんですね。ちなみに私は典型的な汎用型の人間です。つまり器用貧乏。どうでもいいことですが(笑)
で、今日は、その「鉄鍋でなければ」という実例のご紹介。「鉄板」ということでも良いと言えば良いのですけど、実際問題、鉄鍋の方が使いやすいので。
下仁田ネギって、ご存知でしょうか?ネギ好きの方なら、聴いたことくらいはあるかと思いますが、白い部分が、すごく太くて甘くて、煮物にしても良いのですが、私は焼いて食べるのが大好きです。
関西だと太い九条ネギがブランドですよね?あるいは普通に売っている白ネギ(根深ネギ)でも、もちろん充分素敵なのですが……こう、ちょっと表面が香ばしくなるくらいに焼いたら、甘味のあるヌメりと、ジューシーさが本当に贅沢で、ちょっと醤油を垂らしてもいいですけど、そのままでもすごく美味しいですよね~~♪
これ……まあ、焼き鳥方式なら、それはそれでいいんですが、燠火まで待つの大変だし、簡単とはちょっと言い難い。この白ネギの一番の美味しさを、最高の状態で、簡単に味わうには……実は、薪ストーブ天板調理&鉄鍋以外のセレクトって、ないんですよ。
鉄板と比べて、鉄鍋はフタもできて中まで火を通しやすいですし、そもそもコロコロ転がる丸々としたネギが、思わず鉄板の外にダイブしなくてもいいという安心感があります(笑)
この白ネギをシンプルに美味しく焼くだけって……実は汎用性の高い、例えば、アサヒ軽金属製の、優秀なテフロンコートをしたアルミ厚手鍋なんかでも、できることはできるんですが、実は難しいのです。「焼いたあと」が。
どういうことかと言いますと……白ネギ焼きの、最大の魅力である「甘味のあるヌメり」って、思いっきり、焦げ付くのですよね……鍋底に。これが、肉とか魚とか、多少でも肉汁というか脂が出てくるような食材だとか、逆に普通の野菜みたいに甘味とかそれほど多くないものなら、テフロンコートの汎用鍋で焼いても、別に問題ないのですが……
白ネギだけは、いけません。「ね~っとりとした甘味」、超美味しいです!犯罪的。でも、その甘味を引き出すほど「激しく」焦げ付きます。テフロンでも負けます。焦げ付きを取るのホント大変なんです。これでは、いくら美味しいネギを食べたくてもためらってしまうし、かといって焦げ付かないように油を引いちゃったら、それは本当の美味しさではありません。たぶん。
そこが、鉄鍋なら、甘みが激しく焦げ付いてしまっても全然平気なんですね?金タワシでガシガシやれば、あっという間にピカピカ(笑)この気楽さ、タフさは、ホント、鉄鍋だけです!!鉄にホウロウを引いたやつも良いですよね?我が家もこのタイプです。
さらに、私は、鉄鍋の「熱伝導率の程よい低さ」も好きです(笑)耐熱セラミックだと熱伝導率が低くて天板ではちょっと上手に焼きにくいし、アルミだと全体が無用に熱くなりすぎる。
下の写真は、実際に焼いているところですが、薪ストーブ大活躍で鉄鍋が乗り切らなくて、ちょっとはみ出ているのですが、天板に接しているところはしっかりと熱いので、ジュージューと上手に焼けます。逆にアルミと違って鍋全体が熱くなりすぎることもないので、ハンドリング良いです。
鉄板にホウロウ引きという、テフロンコーティングのアルミ鍋が盛んになる以前の「万能鍋」、昭和を風靡した伝統的ともいえるスタイルですが、たぶん、アルミの鍋そのものの軽さと、熱伝導率の前に、一部の趣味の要素を除いて敗退し、廃れていったと思うのですが、用途によっては「替えが効かない」簡単さ、存在価値を、今なお見せてくれます。
……私なんか、すごく、嬉しくなるのですよ。たとえ小さくとも「あなたでなければ」と「活躍する場所」が、ちゃんとあるって。存在に込められた「思い」は、無駄になることなく、ちゃんと輝きを放つわけです。
それが嬉しくて、私は、一見ムダ・冗長以外の何物でもない「多様な在庫の山」を抱えてしまうわけです。ついでに生き物の世界、人間社会も、まさにそうじゃないかとか思っていまして……生物学的な文脈ではダーウィニズムの自然選択説の影に隠れてしまっていた棲み分けによる種の多様性の増大に光を当てた今西錦司の立場ですね。はい、ここはスルーするところです(笑)
そういうわけで「全ての」調理器具には、適材適所、ちゃんと活躍する場所がありますよ、という、「ランキング」への補足でした。
次回は……なんのお話にいたしましょう?お伝えしたいことは、まだまだいっぱいありますが、話は右往左往、読むほうは大変ですよね。お付き合い下さいまして、誠にありがとうございます♪
それでは、また!