薪ストーブ炉内料理といえば、燠火が基本です。炎が上がっている状態というのは、結局はススや煙との戦いになりますので、燻製でもない限り、鍋を炉内に入れるにしても「汚れる」のは避けたいものです。
いろんな考え方がありますが、炎さえ上がっていなければ、あとは工夫次第で、いろんなことができるのですが、燠火料理の基本は「ちょうどいい火力」を待って、燠火が保たれる時間内に完了するよう「調理内容を選択する」というものです。
前回記事で触れた「パーティメニュー」で、私は薪ストーブで色んなものを焼く羽目になりました。しかも雨降りで寒かったので、早い時間から、すでに薪ストーブがついていました。それはつまり「大量の燠火」を作れないことを意味していました。すなわち暖房としてはもう高出力は要らないので、大量の燠火を作ったとしても、不要に暑くて薪が勿体ないということです。
その「パーティーメニュー」で「薪ストーブで焼いてほしい」と、家族が準備したのは、こちら。
- 豚肉スペアリブ
- 牛ばら焼肉
- 牛やわらかステーキ
- 鶏肉ステーキ
- しいたけ
- 長ネギ
その気になれば、全部、燠火で焼けるものです。けど、燠火の基本として絶対に大切なこととして、「燠火が保たれる時間内に調理を完了する」という制約があります。ところが燠火料理開始の段階で、すでに燠火は限られているわけです。そこで、燠火で焼くものを「燠火でこそ美味しく、比較的弱い火力で焼けそうなもの」に以下のように絞りました。
- 鶏肉ステーキ
- 牛ばら焼肉
絞った二品を、この順で、焼こうと。つまり、より火力が必要な鶏肉ステーキから先に。牛ばら焼肉は、最悪、火の通りが甘くても食べられる。燠火が弱っていっても、じりじりと調理は可能です。
むしろ、燠火料理の基本というのは、最初にも書きましたが、強い燠火だと火が通る余裕もなく「あっという間に」表面だけ焦げてしまうので、できるだけ弱い燠火から始めるのが「失敗しないコツ」、基本です。
この熾火料理に際して、私は、もちろんあらかじめ準備をしておきました。大量の燠火をいっぺんに作りたいときは、スギやヒノキがとても便利なのですが、穏やかな火力で、しかも長時間持たせたかったので、樹種の選択が重要です。
すなわち準備として、私は「とっておきの」硬くて重くて火持ちのする木を、早い段階から炉内に入れていました。これはいつも燃え残る状態になりますから、他の燃えやすい材を周囲に次々とくべていきます。それでも、中心部は黒々と重いままで、周囲だけが赤くなっていて、周囲が冷えてきたら、もう消えそう、というくらいギリギリの燠火となっていました。
でも、冒頭写真のように、周囲の一部赤くなった燠火がじりじりと続くだけの状態で、とっても美味しいチキンステーキ4枚を仕上げることができました。
その引き続きで、牛ばら焼肉をひとパック、小さいけど20枚くらい?けっこう枚数あったと思いますが焼いていきます。やっぱり火力が弱いままですが、強いよりは、明らかに失敗がないです。遠赤外線なので、表面だけが焦げて、中味はジューシーです♪
燠火は、弱いめで、それでも消えずに、長持ちするものが使いやすい。要は、やっぱり炭火のイメージです。
まずは、 これが燠火の基本中の基本ですので、ぜひ、普段から、炉内にくべる木の種類、あと、薪の大きさにも気をつけて、燠火の様子を観察するように心がけて下さい。いい具合に燠火になる種類の木がわかったら、それは、別に取り置きしておくことも、私のようなケチケチ生活ではお勧めします♪
なお、薪の大きさに関しては、例えば燃えやすいスギでも、一度温度を上げて大きな薪が燠火になった状態を作ってやりさえすれば、扉を閉めて空気を絞ることによって、ジリジリと長持ちさせることも可能になってきます。
薪の大きさ、すなわち「燠火の表面積」っていうのは大切です。いくら火持ちの良い種類でも、細かい薪ではすぐに燃え尽きるのは想像頂けると思います。逆に、大きな薪からの燠火だったら、弱くなってしまっても、あるいは燠火を待って弱すぎる状態になっても、一時的に火力を上げるだけに割り切れば、燠火を細かくして空気と触れる面積を増やすことによって、あと扉も開け放しにして空気を送り込んでやれば、短時間だけですが強火は実現することができます。
実際の「パーティーメニュー」でも、牛ばら焼肉がちゃんと焼けたあとに、私は、最後に燠火を砕いて一時的に火力を上げました。それには合理的な理由が二つあって
- 豚肉スペアリブを表面だけでも強く焼いて肉汁を閉じ込めたかった
- 燠火にして寒くなって来た室内を暖めるために薪ストーブを立ち上げなおす
そう、肉を美味しく食べる基本は、まず、表面を高温で焼き付けて、肉汁を内部に閉じ込めることです!!
ですので、短時間でも、表面だけがしっかり焼ければそれでオッケー♪ 写真は省略しましたが、燠火の「最後のご奉公」、豚肉スペアリブの表面は狙い通りこんがり焼けましたので、表面だけ焼けた豚肉をアルミ製の熱伝導の非常に良いフライパンに移して、改めて薪ストーブの焚き付けを行いました。
そうなんです、燠火料理って、ある程度長い時間やっていると、少なくとも我が家では部屋が寒くなります(笑)薪ストーブは、昼間の穏やかな運転から、夜更けに向かって外気が冷えてくるのに合わせて、「これから」が本領発揮。素早く立ち上げて、部屋を暖めます。さようなら燠火(笑)
さあ、次は豚肉スペアリブです。表面だけしっかり焼き付けた後は「しっかり火を通す」ことに専念したいです。燠火でも、良い燠火で「それだけ」なら燠火のまま引っ張りますが、むしろ「しっかり火を通す」ことが大事なら、燠火よりも、それをジューシーにやり遂げる別の手段があります。
次回は、そういうことで続きを。それから、先ほど燠火が強すぎる場合に「扉を閉める」という手段をちょっとご紹介しましたが、扉を閉めて放置できない場合もあります。あるいは「短時間で表面だけ加熱」という条件でも豚肉と違って「牛やわらかステーキ」のように、むしろ中身に火が通り過ぎてはいけない場合は、扉を閉めるのではなく、別の手段を使って燠火と付き合います。
それらも、これから随時ご紹介していきます。そんな調子で、いかがですか?当ブログのフィナーレ、「まとめ」シリーズ。このシリーズだけ読めば、あなたも立派な薪ストーブ調理人です♪
それでは次回も乞うご期待~~♪