週末、やたら難しい(?)テクニカルな調理について書きましたが、冒頭写真を見て、あーあ、やっちゃったか……と思われたのではないでしょうか?(笑)そうです。そこに炎、とりわけ炭火なり燠火があれば、基本は、なんといっても「これ」ですよね~~♪
ところが、「薪ストーブ調理」をテーマに(ホンマかいな?というご意見はさておき)もうすぐ100記事を数えようとする当ブログですが、焼き鳥は初登場なのです。焼き芋が何度も何度も出てきているのに、対照的です。
しかしまあ……何といっても、美味いですよ。この燠火での焼き鳥は、炭火焼と全くいっしょ。遠赤外線効果で、表面は香ばしく、中味はジューシーです。当ブログ、加熱方法としては、いかにして遠赤外線を活用できるように工夫するべきか、難しい理屈も含めて、これまで散々言って来たのですが……
あるいは、炭火と同様、炭素成分だけが燃える状態となっている燠火がもたらす、水分の影響のない、パリッとした焼き具合の重要性についても、考察してきたわけですが……
実際問題、そんなこと何一つ知らなくったって、焼き鳥を食べようと思って、例えばフライパンなり、魚焼きグリルで、焼き鳥を焼こうとする方って、あまりいないんじゃないかと思うのですよ。「温め直し」は別として。
薪ストーブがあれば、炉内に良い具合の燠火が出来たら、ごく普通に、そこで焼くだろうと思うのですね?ごく自然に。まず百人中百人がそうするだろうと思うのです。
なにしろ焼き鳥は「炭火焼が美味しい」が常識だからです。だったら熾火で焼いてももちろん美味しい。誰もが普通にそう思う。もはや理屈もこねようがないのです。せいぜい、薪ストーブだったら、焼くのも保温も同時に出来て、便利ですよ~~という程度かなと。こんな感じ。
薪ストーブの炉内&天板の二役運用、そういう便利さについては、過去にも記事にしました。
……でも、普通、薪ストーブで焼き鳥が焼き上がったら、その場ですぐに食べちゃいますわね??(笑)そういう「薪ストーブならでは」の一台二役みたいな工夫も必要なくて、誰でも思いつくからでしょう、薪ストーブのブログや薪ストーブ料理の記事には、一般にあまり登場しません。
そういう「ブログでウケるネタ視点」では、ちょうど、当ブログも前回、こんな上級者向けの「芸当」を紹介したところですが……
しかし、改めて考えると、そういう「芸当」みたいな特殊なのって、調理を紹介するという本当の趣旨としては「良くない」のです。少なくとも、そんなのいきなり挑戦するもんじゃないと思うのですよ。薪ストーブ調理の場合は、特に。
なぜなら、炎をあやつり、炎とお付き合いするときに必要となる「基本」、「私たち」の「生き物的な感覚」って、実は、相当程度「鈍って」しまっているのですね?スイッチポン、の便利な世界に、すっかり慣らされてしまってますから。
ちょっと調理とは話がそれますが、そういう「基本が必要ない便利な世界」への慣れって、イベントとかで、来場者の方に火を点けてもらおうとすると、本当に実感します。今、火を起こすことにしても、バーナーみたいな便利な道具が「当然」になっていて、それは薪ストーブやっている人でも、もはやそうなんですね?例えばこんな感じ。
【追記:こんな動画もありました。「高速昇温方法」ということですが、あえて、コメントはいたしません】
だから、何もアドバイスせずに「火を起こしてみて下さい」って実際にやっていただいたら、私に言わせれば「バーナーがあれば、火が付くんだけどな……」という、焚き付けの組み方をされる方が大部分で、バーナーなしでちゃんと火が点くような、基本を押さえた焚き付けの組み方をされる方って、すごく珍しい。
もちろん私も、実際問題として、そういうバーナーのような「便利な道具」を否定するつもりは全くありません。この忙しい現代生活の中で、悠長なことなんてやってられないなんて当然のこと。でも、私たちの「生き物的な感覚」ってのは、便利な道具に慣らされるほどに、日々鈍くなっていくというのも、どうしようもない事実なんです。
で、話を戻していきますが、初めて薪ストーブのある暮らしを始めました、あるいは、これから薪ストーブ生活を始めます、という方なら、とにかく「基本」を大切に、まずは炎を扱うという基本、たとえば薪の乾燥具合に注意するとか、よりスムーズな立ち上げはどうすれば良いかとか、燠火の観察とか……そんな「基本の徹底」から、入って頂きたいのです。
薪ストーブ調理に挑戦しようとするならば、ピザ焼くために炎を立てる「焚き火料理」とか、そんなのではなくて、まずは燠火料理という「基本」を徹底する。
そのとき、この、誰もが思いつく、なんの変哲もない、焼き鳥というのは、薪ストーブ炉内での燠火調理に取り組んで頂くのに、これほど良いメニューはありません。
「ただの焼き鳥」とか、決して馬鹿にしたものではないのです。本当に、びっくりするくらい美味しくできますよ?包熱効果に加えて、ちょっと燻製的な香りの要素も入って、単純な炭火バーベキューよりも、絶対に美味しい。燠火の調製、見極めがうまくできなくても、非常に失敗しずらい、潰しが効くのも特徴です。
「スイッチひとつで簡単便利」という感覚から離れて、薪ストーブとまず付き合い始めるのにあたって、薪ストーブ案内人としての私は切に願うのです。「新しい世界」の入口は、できれば、幸せな記憶に彩られたものであって欲しいと。
早くも、年度末、3月ももはや最終週です。年度末のバタバタもありますが、来週から新しい生活を始めます、というような方もいらっしゃるでしょう。薪ストーブのお付き合いと全く一緒。慣れていない、思うようにできない自分自身を「それで良いんだ」とちゃんと愛して、どうか無理せず、できることから、基本から、ゆっくりと始めていただけましたらと。
そういうことで、もうすぐ桜咲く季節。当ブログもいよいよ「終盤戦」です。え?ずっと、毎日更新じゃなかったのかって??……いや、そうしたいのは山々ですが、だって、さすがに、薪ストーブのシーズンが終わっているのに、日々の感動がなくて、記憶だけで料理について書くとか、難しいじゃないですか(笑)
ですので、これからは、ちょっと「まとめ」に入りたいと思うのです。ちょうど昨夜、薪が本当に貴重品になってきた我が家では、私がとてもアクロバティックな薪ストーブの運用をして、数々のメニューを、本当に最小限の薪で、それぞれの調理法に最適な加熱法できっちり仕上げました。味付けは妻や娘でしたので、加熱方法だけですが(笑)それでも皆「美味しい~~!!」って感動してくれたので、家長の面目躍如です♪
メニューはすごい贅沢で……写真の鶏肉ステーキから始まって、牛ばら焼肉、椎茸甘辛蒸し、白ネギ焼き、豚肉スペアリブ、牛やわらかステーキ、というメニューで、薪ストーブの炉内燠火と天板を順番も含めて慎重に組み合わせ、駆使して、我ながら全て合理的な調理方法で仕上げました♪ pic.twitter.com/uYDyhm8gdH
— 大屋@薪ストーブ事業 (@aiken_makiss) 2017年3月26日
これも、一つ一つを感動するくらいに美味しく仕上げるために必要なのは、何も難しくない「基本」だけなんです。基本の調理理論に忠実な、調理器具の工夫とかやり方。特別なテクニックは使っていません。薪ストーブのプロとしての経験が活きたといえば、ただ組み合わせというか、調理の順番を上手にやっただけ。
その調理の順番も含めて、次回から、当ブログ「終楽章」として、これまで紹介してきた「主題」を懐かしみ、振り返るように、調理の基本を組み合わせながら、今シーズンのフィナーレに向けて展開して参ります。
次回は、燠火料理の基本について、鶏肉ステーキあたりを題材に振り返りたいと思います。なおこのフィナーレの中では、基本を大切にしながらも、「スギみたいな燠火料理に不向きな薪しかない」というような変則への対応も随時紹介していきますので、どうぞお楽しみに。
それでは次回も乞うご期待~~♪