「家に薪ストーブを入れたい!」と思ったときに、最初から「○○を薪として使って暮らしてみたいと思って!」という動機とかあればいいんですけど、普通はなかったり、あるいは動機があったとしても「実際にやったことない」場合がほとんどなので、現実として薪が調達できるのか?なかなかわからないものです。
しかも「薪ストーブで暮らす」となると、質も大切なのですが、薪の量というのが、なんにせよ決定的になります。どんなに少なく見積もっても(我が家です(笑))1年間で2立米(ざっくり1トン、軽トラで約2杯半)、例えばそれだけの量でさえ、自宅に置いておく場所がなければ都度調達するしかありません。
そんな場合などは、単に売られている薪を買えば良いのですが「暖房コスト」として家計を直撃してきます。それに「その気になれば」労力はかかるもののお金をかけなくても手に入れることができるものを、わざわざ買うというのは、なかなか心理にも抵抗を感じるものです。
そこで現実的には、皆さん、各種ハイブリッド的に自前と購入を組み合わせながら薪を調達して、暮らしていらっしゃるわけですが……
www.aikenmakiss.com 弊社、「環境事務所」と銘打つ割に、薪ストーブが環境に良いか、直接的にはほとんど訴えないのですが、実のところ私は「環境カウンセラー(市民部門)」でもあり、「森林インストラクター」でもありますので、本来なら、思い切り「意識高い系」としての薪調達を、もっと主導啓発しなければならないのかもしれません。
「意識高い系」としての薪調達とは、この薪ストーブの大先輩ブロガーSuitenさんによる、こちらの記事
www.makitomo.net 「原木を無料で手に入れる方法」として第1位に登場する
山林ボランティア、山林保全ボランティアで活動する
……これですよ、これ。まさに王道中の王道!
実際に弊社のユーザーさんにも「意識高い系」の方も現にいらっしゃるし、あるいは私の知り合いの方で、薪ストーブ屋でもないのに、「薪集めの会」を実際に組織化して、しっかり運用なさっている方とか、現にいらっしゃいます。
ところが、それにひきかえ「私にはできない」というのが正直なところです。プロ用チェンソーも持っているし、伐採技術も腕前も最低限はあるし、何より森の手入れのための知識もちゃんとある……このように条件は人並み以上にずっと整っていて、そもそも薪ストーブ屋であるのに「できない」。
そんな私自身の内心や理由の説明はちょっと複雑に過ぎるので避けますが、このような自らの実態、体たらくに悩んで、相談に行ってきたというのが今回の背景です。相談に行ってきた先は、こんなところ。
satoyama-gaku.jp 端的に申しまして、当地、愛知犬山において地域の環境保全や森林保全を実践している総本山みたいなところです。そこに、森林保全とか特に興味ない、ただ薪が欲しいだけ、みたいな人ってどうなんでしょうね??という相談を、組織のトップである林先生に持ち掛けたのです!(笑)
ちなみに林先生というのは、こんな感じで講師をされているような立派な方です。
森の保全に興味がある人と、薪が欲しい人が、全く分かれているって……それでいいやん?それが正しい姿。
……で、結論を言いますと、これが林先生のお答えでした。いろいろ例も上げながら丁寧に説明して頂いたのですが、私なりに理解したことは
- もともと社会の永続性というのは、人が分かれているということが大事。薪が欲しいだけの人が山に作業に入って来ても、それは山の作業をやりたい人にとっては邪魔になるだけ。お互いのためにならない。
- 人はそれぞれが「本来やるべきこと」に集中した方が良い。山の作業は森を健全なものにするためにやっているのであって薪を売るためではない。切り倒した木は本質的には捨ててしまえればそれでいいのであって、そこに労力をかけるのは山の作業をする人としては、できるだけ避けるべき。
- ただ切り倒した木は、山の作業では捨てるものであっても、割って乾かせば薪として利用できるので、そうしたい人が引き取って薪にするなら、それはお互いのためになる。過去の日本社会でずっと行われてきて、永続性のある形がこれ。
森と人との関りにおいて、森の中に入って木を切るのが上流側、薪ストーブで薪として燃やして利用するのが下流側とすれば、自らとして上流側に主体的に関わりたいと思えば、もちろんそうすればいいし、逆に下流側にしか関心がなければ、無理して上流側に立ち入ろうとかしない方がうまくいくはず、ということです。
言われてみれば、実にそのとおりで、日々「薪ストーブのある暮らしすてき~~これ、何とかしてたくさんの人に届けたい、拡めたい!!」とばかり思っている、そんな私の薪の主な調達ルート(継続しているもの)は、主に次の二つ「だけ」。
- お友達の造園屋さんが、仕事で出た「ゴミ」としての木の幹を「薪になるでしょ?どうぞ」と我が家に持ってきてくれる
- 自分のテリトリー(毎日散歩している森やら、近所の公園)で木が倒れてしまったり邪魔になっていたら、技術も道具も揃っているので率先的に片付ける
年間2立米なんて、そう大した量ではないので、だいたいこれで賄えてしまって、あとはイレギュラーに頂いたり(処分に困った木の持込先としてご近所で認知)とかで、特に買ったりしなくても暮らしている、と申しますか……
暮らしに必要な量の薪さえ手に入りさえすれば、あとは下流側の仕事に全力投球したい
よく言えば、林先生の仰る「分かれた先」で、自分の本来任務にしっかり当たっているのであります!!環境カウンセラーや森林インストラクターとしては「せっかくの有資格者としては、どうなのかな?」とは、時々思ってますけどね……
……というわけで、前置きは以上、本題です。犬山里山学研究所の拠点「犬山里山学センター」の敷地内では、NPOの本来任務である「地域の環境価値の向上」のための作業に伴って出た木材を置いてありますので、薪にしたい人は、どうぞ好きなだけ持ち帰って活用して下さい。
林先生と私で意見が一致しているのですがサクラには特別な価値がありますので、サクラは少し量に応じてお金をお支払いいただきますが(kgあたり10円)、それ以外の原木は無料です。
ただし!条件があります。
- 犬山里山学研究所の会員になっていただくこと(年会費2000円のみ必要)
- 現地で切ったり割ったりなど作業を行う場合は、そのための道具は持参すること
- 販売でなく研究所の本来任務でもないので、職員は所定の集金以外は何もしません
年会費は、私がお友達の造園屋さんに、時々お礼のお菓子を持って行くのと本質的に同じ意味です。「そちらの仕事のことは私はわからないけど、ありがとう、薪の原木をもらえて助かっています」ということで、お世話になっていることのお返し、現場に対する「ささやかな支援」を形にするものです。
世の中、そういうこと(本来目的での不用品を欲しい人に引き渡すプラットホーム)で間に合うなら、それで良いんじゃないでしょうか。もちろんそれで間に合わなければ「対価を支払って」、販売目的で提供されているモノを買うことによって「経済が回る」ということになります。
冒頭写真の「切って割られている薪」も、本来販売目的ではないので、乾燥保証もなしですが、必要な会員には格安で提供してもらえます(木の種類その他の区分によりkgあたり10円~40円)。値段の詳細については弊社までお問い合わせ下さい。
なお、犬山里山学研究所の原木は、研究所の会員であれば誰でも入手頂けますが、実際に原木の在庫がどんな感じであるかどうか?等の問い合わせに応じるリソースは研究所にはありませんのでご自身で直接現地に行って確認くださいませ(弊社ユーザーさんについては後述)。
里山の自然に関心がある方、好きな方なら、薪関係なく、足を運ばれても楽しいと思いますよ?!
とはいえ、遠方の場合もありますので、弊社ユーザーさんにおかれましては、私、大屋まで予めお問い合わせ下さいませ。ちょっと時間作ってセンターに実際に出向いて、原木の現在の在庫状況を確認してお知らせいたします。
何度も申しますが、私の一番の願いは、まず、ユーザーの皆さまに「薪ストーブで楽しく暮らして頂くこと」ですので!!各種環境系の資格を持った「意識高い系」としては、ちょっとどうか?と思われても仕方ないですけどね~~林先生にお悩み相談でラクになりましたけど(笑)
そういうわけで本来意識高いあなたさまにおかれましても、今のご自身の状況に合わせて、無理なく、楽しく、お過ごしくださいませ!!
それでは、また。お元気で!!