前回記事では、先の冬が寒さが厳しく、薪の消費量も前年の1.5倍に及び、私もほとんど初めて、外部から薪を購入することで何とか薪を確保して乗り切ったことなどを報告しました。
ただ、普通なら事前に準備してあった薪がなくなるので、薪を買う……というはずなんですけど、冒頭写真(3月17日撮影)には、右手前に大量(?)の薪、しかも購入してきたにしては細くてグネグネ気味の薪が残っているのが映り込んでいますよね?
そうなんです、これは、買ってきた立派なナラ薪を消費してまで、今後に残しておきたかった自家調製の「サクラ薪」なのです。
撮影日は4月13日、3月17日に比べてそれなりに減っていますが、我が家にご見学にみえた方なら「なんか、そんなこと言ってた」と思い当たるかもしれません、ご見学の際に実演で使われるメインの薪は、必ずというほどサクラ薪です(端材や枝など焚き付け→サクラ薪→厳冬期で食事後の打ち合わせの間も暖め続けるならナラ薪)。
サクラ、樹皮を見れば、たぶん誰もが「ああ」って思いますよね、樹皮にもけっこうバリエーションがありますが、桜は皆さんにとても馴染みの深い樹種ですから、原木に混ざっていても結構簡単に見分けることができるはずです。木部にも色合いとか特徴があるので、注意深く見れば見分けられます。
……とか言って、個体差が大きいので、密度感が高くてナラ・カシと間違って、ユーザーさんから指摘されるという、そういうお恥ずかしい事例もありましたが!!(笑)
ご指摘ありがとうございました!実物を再度確認、検証してみました!!ご指摘のとおりサクラだと思います。ただ、やたら密度感が高く、そして実際に燃やしてみたら、やはりシューシュー言いました。左からブログ記載順(5年乾燥薪、3ヶ月乾燥薪2本)です。 https://t.co/1i6ujb2QGR pic.twitter.com/G0BX830qKB
— 大屋@薪ストーブ事業 (@aiken_makiss) 2021年3月12日
ともかく、サクラ薪というのは、私にとってはナラ・カシ薪よりも「使える」薪でして、次のような特徴があります。
- 原木から薪にする調製の容易さが針葉樹にも近く、少なくともナラ・カシに比べてかなり簡単。すなわち、さほど重くなく切り易く、割り易く、乾きやすい(乾燥期間が短くて済む)
- ナラ・カシに比べて、圧倒的に火がつけやすい。針葉樹の焚き付けから本燃焼に至るのがスムーズ
- 針葉樹なみにボーボー燃やすことも可能な一方、火力を容易に穏やかな状態で安定化できて、その場合、巡行運転における火持ちもナラ・カシに劣らない
つまり、薪として使う樹種として備えるべき特性のバランスに優れるというか、万能性、扱いやすさが素晴らしいのです。かなり以前の過去記事でも、その特性を運用時にうまく生かして、優しい火力を実現した事例が書いてあります……昔は、私も短くて、穏やかな記事を書いていたものです(笑)
そして、サクラの優れていることは、この「燃料としての扱いやすさ」だけでは決してありません。我が家には多くの方が薪ストーブのご見学にお見えになるわけですが、かなりのケースで、このサクラの力を直接借りたおもてなしをさせて頂いております。
具体的には、えも言えぬ、少し甘い&スパイシーな香りづけの力。ええ、なにしろ燻製の「チップ」に使われる樹種の代表格ですからね!!
……どうでもいいですが、この記事↑、わずか3年前なのに、サクラと一緒に写っている飼い犬の「ムク」が若ーい……(笑)
ともかく、このブログで「サクラ」という検索ワードで過去記事拾ってみて頂きたいのですが、私はサクラを絶賛しております。しかし、世間一般には、薪として桜はそれほど評価は高くなく、でも、それは何故かも想像はついておりまして……
立ち上げに20キロとかの薪を使って、炉内に充分蓄熱された状態を作って巡行運転状態を達成するタイプの、総重量200kg近いような薪ストーブでは、サクラはかなり短い間に燃え尽きてしまうことになると思います(せっかくの低出力での安定性が何も発揮されない)。
炉内の蓄熱を最大限使って、太い薪をゴロンと入れて長時間無補給で燃やすのなら、とにかく「火持ち」というか「すぐに火が点いて燃えないこと」の価値が大きいのです。もちろん、世間一般に薪として人気の高いナラ・カシは「高蓄熱状態で巡行運転させるときの火持ち」だけに着目すればとても優れています。
ただ、蓄熱の補助が乏しい状態での薪の火持ち、単独で炎を保つ性質については、私はナラ・カシよりも「クロガネモチ」が最強じゃないかと思っております。とはいえクロガネモチも火がつきやすい、すなわち高蓄熱環境下では燃え尽きやすい性質があります。要するに、薪ストーブの機種や燃焼室の蓄熱具合によっても「もっとも火持ちが良い樹種」は違ってくるのです。
そのような視点で言えば、私にとってナラ・カシは、確かに火持ちは良く、とりわけ厳冬期に火力が高い状態のまま連続運転するときには、とても重宝しますが、普段使いの視点から見れば、そもそも薪にするにも硬くて切ったり割ったり大変だし、すごく乾きにくいし(細く割って複数年乾かしても、燃やすとシューシューいう)、厳冬期に備えて、ある程度の量あれば、まあオッケーというか……
ガンガンに蓄熱させるタイプの重い薪ストーブではない、もっと言えば廃材や針葉樹も巡行運転の薪として使えるタイプの比較的軽い薪ストーブを使っている私にとって、大量にあっても絶対に困らないのがサクラというわけです。厳冬期にガンガン燃やすには、もったいなくて気が引けますけどね……
そのような理由で、令和3年度の極寒の中では購入したナラ薪、あるいは極寒が開けてからは建材や雑木というように、あらゆる薪が暖房目的に駆り出されていった中でも、サクラ薪は、我が家では主にお客さんをおもてなしする(失敗できない)場面やパーティーの(薪の香りも楽しみたい)場面のために温存され、今なお、最も良好な状態(長い乾燥期間)を保って大切に取ってあるというわけです。
このように、薪ストーブを実際に使われている方なら、もはや言うまでもないとは思いますが、世間的な常識(薪にはナラ・カシ最高)に囚われ過ぎることなく、ご自身の機種と目的(我が家なら生の炎を直接生かした調理用途)によく合った薪を、区分して、大切に取っておくなりしていただければと。
……なお、薪の原木配布会などでも、このようなサクラの価値は「知る人ぞ知る」、サクラがあれば「あっという間に」なくなってしまうそうです。そして弊社が提携している犬山里山学センターでも、原木提供においてサクラだけは別格扱いとなっております。
よって、たとえ厳冬期で薪がなくて苦労しても温存されるような価値があるのがサクラ薪である、ということを、ここで「こっそり(笑)」お教えしますので、もし、十把一絡げの雑木としてサクラを見かけたら、あまり狂喜することなく(悟られないように(笑))、確実に確保されますことをお勧めします♪(ただし、腐りやすい樹種でもあるので、菌糸が入り込んでモロモロしてたら敬遠したほうが良いかも)
繰り返しますが、それも薪ストーブの機種によりますけどね……でも薪の消費量(立ち上げも含めて)が少ない機種を選んで、省燃費に暮らしたい方なら、サクラは、ともかくお勧めです♪
それでは、また。お元気で。