【2020年12月26日追記;よく読まれる本記事ですが「事実と異なる」というご意見も巷にはあるようです。風の流れがなかったにしても、実際、どうなんだろう??と改めて考えたのですが……たぶん、乾燥して困る困ると仰っている薪ストーブユーザーさんは、Tシャツ&短パンで過ごすような暮らしをなさっているんじゃないでしょうかね??弊社の薪ストーブでは、そういう暖房は薪の消費量的に「過剰」で、あくまでも普通の冬の室内着で過ごす程度の「バランスの取れた暖房」を想定しております。】
昨日の記事の最後を飾った、この写真。室温がめでたく20℃を超えたよ、ということだったのですが……お隣の数字に「おやっ?」と思った方、いらっしゃいますか??湿度です。34%って、ちょっと、低いんじゃないの~??と思った方、鋭いです(笑)
本当にグッドタイミングで、湿度についてご質問を頂きました。これから弊社のユーザーさんになって頂けることが決まっている方です。この方も本当に心優しくて愉快な方なんですが、一方で、色々調べられて頂くご質問は本当に鋭くて、私の方が「これは……!確かに、どうなんだろう??」と都度冷や汗をかいている……もとい、改めて勉強させて頂いているという具合で、今回も例外ではありません(笑)
……といいますか、これまで弊社のユーザーさんになって頂いた方は、皆さん総じて、本当に色々なことをご自身で調べていらっしゃって……
つまりそれは、今のところ弊社を選んで頂いているのは、そういうふうに、色々なことを自ら調べ上げる能力を持った方「だけ」という状況でございまして、私個人としては調べ上げた末に選んで頂けたという事実に加えて、本当に様々なことをユーザーさんから教わることができて、とても嬉しいのですが……販売者としましては「これは、いかん!!」と大いに反省しているところです(笑)
で、グッドタイミングで頂いたご質問は、薪ストーブを入れて困ったこととして「部屋の空気がとても乾燥する」ということが挙げられていて、かなり具体的な対策法などが巷で言われていますが、実際のところ、どうなんでしょう??というものです。
どうなんでしょうね??……本当に。ご質問を頂いて、私も、改めて、本気で考えてみました。
まず、薪ストーブのある部屋の湿度って、どうにも、不思議ではあるのです。昨日の朝の立ち上げを例にしますと、室温が8℃から20℃まで変化したのですが、そうすると飽和水蒸気量は1㎥あたりで8グラムから、17グラムという感じで倍に増えるのですね?理論上。すると「湿度」は半分にならないといけないのです。理論上。ところが実際には「ほとんど変わらない」。湿度計壊れているの?と思うくらい。こちらの記事で、温度計の写真の「湿度」の数字を、ざっとご確認になってみてください。
一般に、暖房と湿度の関係は極めて密接で、灯油なら燃やすと水が出ます。これは比較的よく知られていて「同量の水が出る」というのも、なんとなくイメージできます。さらに、ガス火なんて実はもっとすごい量の水分が出ます。燃焼に頼る暖房においては、その運用は、まさに湿度との戦いなわけですが(ガラス窓がベタベタになるのみならず、家の躯体、室内壁の奥にある見えない柱の木部で結露してしまうとか、建築物そのものの寿命にも影響する深刻な問題含めて)……
その点、薪ストーブは、湿気を全く出さなくて、それで温度だけが上がりますから、激しく乾燥する「はず」なんですよね。それが薪ストーブの欠点だとも言われる。巷の「薪ストーブ困った説」の根拠です。実際に、乾燥に困っていらっしゃる方もいらっしゃるようなので、こんな昨日の計測データだけをもって、軽々に物事を言うわけにはいかないのですが……
一つだけ、確実に言えること。同じように湿気を全く出さないエアコンの「乾燥」と、薪ストーブの「乾燥」は、まるっきり、感じ方が違うのです。この「知恵袋」でも「abcdefg_daikinさん」が回答している内容に、ちょっと着目して頂きたいのですが……
私も、エアコンに頼っている時は、ホント、乾燥が辛かったです。冬になるといつも咳が余計に出ると言いますか……お風呂場なんかでは、ホッとしたものです。それが、今や、乾燥の悩みなんて本当に感じない。咳も、そういえばすごく減っています。乾燥肌に悩まされているという妻からも、年頃の娘たちからも、薪ストーブになってから、部屋が乾燥して辛いって、一度も、言われたことがないのです。
だから、エアコン比でいきますと、薪ストーブは「乾燥を感じない」、これは、間違いないと思うのです。
その理由なんですが……空気が動いている、ということが「体感する乾燥」の本質的な問題であるような気がするのです。エアコンって、もちろん、空気を動かすことによって暖房するわけですから、その空気、つまり風が乾いていると「とてもつらい」。
一方、薪ストーブは……これ、本当に、空気は動かないのですよ。少なくとも、モキ製作所の薪ストーブのような「完全輻射熱型」の薪ストーブの場合。そうすると、仮に湿度が「快適範囲」から外れていても、体感的には「全然、気にならない」ということになるのかなあと。
現に「湿度計」なんて、我が家では全然気にすることないし、誰も見ない。だから、一つの経験説としては、おそらくですが、湿度って、「空気が動いているのと、動いていないのと」で、住む人にとっては、全然、意味が違うんじゃないか思われるのです。
一応、体験的な根拠は他にもあります。このブログの中で、私、何度か申し上げましたが、私のもともとのバックボーンは、バリバリの化学実験屋なんですね?
化学実験操作の中で、時に非常に重要なのが「乾燥」なんです。このとき、対象物が加熱できないために、常温で、空気だけで乾燥させる場合なんかもありまして……この時、何が重要になるかと申しますと、送り込む空気の湿度なんて、それほどというか、全く重要じゃないんですよ。実は。
重要なのは、ひたすらに、空気の流れ、「対象物への空気の当たり方」なんです。それで、乾燥のスピード、効率が全然違う。かといって空気の当たり方が強すぎると温度を上げるよりも対象物にダメージを与えることすらある。この「乾燥での空気の当たり方の重要性」って、実は公的な「実験方法書」のどこにも書いていないのです。ところが実際の現場ラボでは、対象物への空気の当たり方が最重要ノウハウ、まさに肝になります。
そんなことを含めて、改めて考えると……おそらく、という言い方ばかりで恐縮ですが、こんなことではないかなと。
「生活環境においては湿度40%以上が快適」というのは、実際には「風」や「空気の流れ」までを含めて言われているものではない。空気が穏やかで動かない場合に限っては、「快適な湿度」の範囲は「もっと下がっても問題ない」。
現に、私や家族は、薪ストーブでの暖房生活を、とても「快適」に感じていますし。同時に、空気が動かない場合に限り、たとえば、冒頭写真のような35%とかなら、住宅内の木材だとか、水槽などからの「穏やかな蒸散」でも、一定範囲内に「自然に」保たれてしまうんじゃないかと思うのです。
あと、さらにもう一つ、皆さんにちょっと感覚で考えて頂きたいのですが……人間って生き物ですから、当然、水分をいっぱい持っています。そんな人間からは、何もしなくても、呼吸やら、体の表面から、自然蒸発の形で水分が出ていっていて、それは色んな数字がありますが、一日に、だいたい1リットル弱とか、そんな量だそうです。たとえばこちら。
一方、空気が動かない完全輻射熱型の薪ストーブ暖房だけの室内で、水槽に入って置かれているだけの水は、どのくらいの勢いで自然蒸発していくものでしょうか??
ちょっと内情恥ずかしいですが、我が家、若干ズボラなところがありまして……リビングでインテリアで置いてある水槽の水位とかも気にしないのですね??それで、このインテリア水槽、年末の大掃除の時に半分弱まで水を入れて以来、ずっと水を補給なんかしていなかったのですが……昨日、ご質問を受けて改めて確認したら、こんな状態でした。
間違いなく25日以上は「薪ストーブによって乾燥した空気」に晒され続けているわけですが……それで、こんな水の減り具合。フタも何もしていません。置いてあるだけ。3センチ弱ですね……蒸発による水位の低下。こういう「乾燥環境」が人体に与える影響を、どうみるか。少なくとも私は、家では何も「乾き」を感じません。エアコン空調の会社では「乾き」を感じますが……
ともあれ、運用実態の一例として、暖房を全て薪ストーブでまかなう我が家では、薪ストーブでお湯を沸かしたとしても、余分な水蒸気の発生を嫌って(せっかくの薪の熱エネルギーが、水分子と水分子の分子間結合の切断に使われるのは無駄だとも思いますし、結露の方がイヤですので)、必要量以上の水を薪ストーブに載せっぱなしにすることはありませんし、濡れタオルを下げたりとか、加湿器とか、湿気を増やす必要性を何も感じないので、何もやっておりません。
以上、まとめたいのですが、まず私、この、巷に存在する「薪ストーブは乾燥するから困る!!」という言説について、ここで何か問題提起したいとか、白黒決着つけたいとか……全く考えておりません。ここで申し上げましたように空気が動くか動かないかという状況によって全く違うでしょうし、個人の感じ方によっても違うでしょう。もしかしたら我が家は、とても乾燥に強い一族なのかもしれませんし(笑)
でも、薪ストーブのプロとして一つ言えるのは、湿度の問題に対する「答え」は、湿度計が数字で示す「快適範囲」ではなく「自らの感覚」こそが知っており、その「身体が言うこと」に耳を傾ける限り、モキ製作所の薪ストーブのような「完全輻射熱型」の暖房装置であれば、室内にちょっと水槽を置いておくとか、何かしら現実的なことで乾燥への実質的な対処は充分可能です。
要するに、「室内の湿度は40%以上を保たなきゃ」とか、巷の言説を絶対視するのではなく、ここで述べたような「説明」で納得頂けるのでしたら、何も心配する必要はありません。
そういうわけで、いかがでしたでしょうか?またもや「脱線」。本来のテーマである「調理の話」には、いつ、戻れるのでありましょう??(笑)
……というか、調理よりむしろ、単に「薪ストーブにまつわる科学」が大好きという、オタッキーな私の性格がバレバレになりつつあるな、とか……(汗)
それでは、次回も乞うご期待~~~♪