超簡単薪ストーブ調理

当社で販売している薪ストーブで、どんな冬の暮らしが待っているかを紹介しているブログです。  興味を持って頂けましたらぜひお問い合わせ下さい

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【番外編】会社の看板作って学んだこと(上)

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 いよいよ梅雨本格化というか、場所によっては豪雨災害とか、そういうのをかなり心配しなければならない状況ですので、風情とか言っておられる時代では、残念ながら、もうなくなっちゃってきた感がありありですが……

 そんなときも読み物くらいは気楽が良いかと思いまして。全く新しい会社を作ったので、その会社の看板を作ったお話を。何もないところからの新会社を軌道に乗せるべく顧客情報とか案件情報とかを集約するシステムを造りながら(昔ながらのエクセルです(笑))、ご依頼頂く設置の仕事とか必死にこなしていたら、ある日、私の事業パートナーである長女が、私にこう言ったのです。

 

「看板作ろうと思うんだけど、「浮き彫り」で掘って作ろうと思うのね?看板になりそうな木、何かないかな?」(口頭)

 

「看板作るのに、保護塗料と、墨がにじまないためのとの粉がほしいのと、こまめの餌がもうないのでもしホームセンター寄れそうならお願いします〜」(出かけて忙しくしてた私へのLINE原文ママ。「こまめ」は、長女が飼っている文鳥のこと)

 

 ……弊社、お客さんに来て頂くのは、Webコンテンツ上で辿りついて頂いてから「実機をみて検討したい」というステップになってからに限られます。ですので、そのWebコンテンツが消されてしまっているままで

 

 「このクソ忙しいのに看板どころじゃないだろ……」

 

 などと、私は思ったのです、正直。でも、長女に事業パートナーになってもらう時に示した方針があって

 

 『あなたが「こうすればいい」と主体的に考えたことは、なんでも、自由に、納得いくまでやってみて』

 

 ということで、看板作ろうと考えた長女の意見を尊重することにしました。

 

 「木、ねぇ……薪ストーブ屋だから、木って、ありそうなんだけど、実際には、薪にするために全部すぐに割っちゃってるからなーー…浮き彫りってことは、版画みたいに彫るんだよね?そういう版画作品作っているお客さん候補の人がおっしゃるには、桜が一番良いって言うんだけど……看板になりそうな桜の材なんて、今、ないなーー……」

 

 「あと看板だから、外に置こうと思うの。雨に濡れても長持ちするのがいいな。会社の看板なのに、すぐボロボロになっちゃったりしたら、縁起でもないでしょ?(笑)」

 

 「……うーん……そうねぇ……」

 

  そこで時間を作って、長女と一緒に、薪の原木があるところまで出かけて行って、看板にできそうな玉切りを見繕うことにしました。そこに、たまたまあったのが、すごく材としての密度が高くて、とてもズッシリとした、しっかりとした玉切り。

 これならきっと、雨に打たれても、長年長持ちするだろうと、それをチェンソーで縦に挽いて板にすることにしたのです。

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 ところが、これがもう、堅いのなんのったらありゃしなかった。原木としては玉切りされた状態だったので、持って帰ってきて庭で作業したのですが、電動チェンソー使ったら、まず、そのチェンソーが成仏しちゃいました、あまりの硬さに。半分くらいまで刃が進んだところで、内部のギアが欠け飛んだらしくモーターがむなしく空回り……

aiken-makiss.hatenablog.com この記事で紹介した1万円くらいのやつですね、ただでさえ後ろ向きだった私の心は折れそうになったのですが、そもそもガイドバー周りの造作が弱くて、すぐにチェーンがスムーズに回らなくなって作業が中断するとか不満もあったので、これも授業料だったのだろうと諦めて、経験を踏まえたうえで色々調べ上げてこれを買いました。

www.amazon.co.jp このチェンソーだけでも、学んだことアリアリだったのですが、それをここで書くと収拾がつかなくなるので、当該「カスタマーレビュー」にまとめました。実名ではなくWeb上でずっと使い続けているHNで書いておりますが、私の記事を読み慣れた方なら、どのレビューが私の書いたものか「一発で」かわかるはず(笑)

 で、チェンソーを検討して頼んで届いて……と、何日か越しの悲願で、ようやく板っぽく引けたのですが、今度は、写真のようなチェンソーで切ったギザギザな面を、きれいに平らにしないと、文字を彫るどころではない。そこで手動でヤスリ掛けしてみたのですが……

 

 堅い、筆舌に尽くしがたく、硬い……

 

  いくらやっても、チェンソーで掘られたギザギザなんて、それが見えなくなるまで完全に削れるなんて毎日30分ヤスリ掛け続けても1年くらいかかるんじゃないか??みたいな感じだったのです。それでも、最終的には……

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 ここまで、平らにできました!!こうやって平らにしてみるとわかるのですが……薪にする木って、重くて火持ちの良いやつとか、軽くてパーッと燃えたりとか、実際に燃やしてみると木の種類の違いってよくわかるのですが、材にしたときの見た目でも、すごく特徴出る場合があるのですね?

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 これ、我が家の鰹節削り器、要はカンナの台ですが、バラバラの黒い破線みたいな筋に見える模様は「カシ目」といいまして、広葉樹の広放射組織の断面が模様として表れているのですね?

 その「カシ目」や、あとは広放射組織を「横から」見る形になったときの模様である「レイフレック(虎斑)」とか……ともかく表面のギザギザをなくしてみると、いかにも「私はカシですよ」と見た目で明らかにわかる材だったわけです!!

 ちなみに木材の見分けに関係する語句、「カシ目」だとか「レイフレック(虎斑)」だとか、そもそも「広放射組織」だとか、普通の、一般の方なら、チンプンカンプンだと思いますが……

 そのあたりの詳しいことについては、↓こちらの人が、きっと、ちゃんと、そのうち解説してくれるであろうと勝手に期待しております!!私みたいに無意識に専門的に突っ込むタイプとお見受けしますので、一般の方にもわかりやすく書いて下さいよーー!!って、お前が言うかって感じですよね(笑)

jumokuzai.hatenablog.com

 

 この、ギザギザを平らにする作業は、妻が木くずまみれになりながら、一生懸命にやってくれました。

 

 「うわー!!すごーい、ありがとう~~……でも、これってさ、こんな硬い木って、そもそも、彫れるんかいな……?彫刻刀なんかで??」

 

 「さあ……掘れないと思うよ?そんなの」

 

 「……だよねぇ……?」

 

 せっかく苦労して、平らにしたのになと、困って長女に相談しました。

 

 「あのさあ、あなたと選んできた木なんだけど、硬すぎて彫れないんじゃないかと思うのよ……だからさ、文字だけを墨で書いてさ、上からニスで塗っておしまいとかって、どうよ??」

 

 (明らかにムッとして)「そりゃ、父さんが、それでも良いって言うならいいよ??でもね、すごく安っぽくて見劣りすると思うよ?私ね?看板作るのに、一生懸命調べたの。それでね、この「浮き彫り」ってやり方が、看板には一番いいってわかったから、そうしようって言ってるんだけど??」

 

 しかし、そうはいっても、せっかく時間作って見つけてきた、この立派な木が使えないとなると、看板作り、一からやり直しです。困って、妻に相談しました。

 

 「はるか(長女のこと)が、そんなことを言うんだけど……どうしようかねぇ……?」

 

 何も言わずに、手元のスマホを取り出して、しばらく何やら検索していた妻ですが

 

 「……看板には、ケヤキが一番いいみたいよ?」

 

 看板には、何の木がいいのか、色々情報を当たってくれていたのでした。自称……というか、ナンチャッテでも一応「森林インストラクター」という専門分野の有資格者である私は、材の知識くらいあるわと、そんなことも調べずに木を選んでいたのでした(笑)

 

 「ケヤキかぁ……なるほどね……ある時にはあるんだけどなぁ……家具の残材とかでも手に入る時あるから。でも、今はないなぁ」

 

 「あとは、スギ、ヒノキ、クスノキイチョウ……そのあたりも、看板には適してるんだって。」

 

 「スギ??そんな柔らかい木が使えるの??濡れたらすぐにダメになってしまいそうだけど?……スギでいいなら、ヒノキなら充分いけるわな……そうなんだ?!全然思いもしなかった……そうかヒノキか、ヒノキでいいなら、ウチにもないこともないよ?……看板になりそうなの!!」

 

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 ユーザーとして、何も知らずに薪ストーブを使いだした頃、丸太の原木から調達して薪にするために割ったけど、ちょうど板みたいにきれいに(?)割れたので、ストーブ本体に対する「遮熱板」のような役割として、熱で痛んだら燃やせばいいやと、気になる部分の保護に使っていた、つまり「盾」として、初期のころに大活躍していたヒノキです。

 このヒノキのおかげで、薪ストーブ本体に対して、どの程度の距離なら輻射熱の影響としてどうなのか?実際大丈夫かどうかなのかを、私は感覚としてつかんでいったのですが……

 輻射熱の影響を感覚としてつかめてしまったあとは、もう、使わなくなっていたのですね、このヒノキ。でも初期のころはいつも薪ストーブと共にあった「歴戦の勇者」、なんとなく、燃やしてしまうのはしのびなくて、なんとなく、そのまま保管してあったのですが……

 まさか、こんなふうに役に立つ日が来ようとは、想像もしておらず!!なんでも「捨離断」の時代ですが、それに逆らって(?)なんとなく残しておいたモノが、余人に代えがたいような思わぬ活躍をするのは、「やった!」と非常に嬉しいことでもあります(笑)

 薪ストーブのある暮らしって、こんなふうに、なんというか、いろんな「ワンダーランド」ではあります。なにより薪が、木という生き物ですので……形も、性状(軽い、重い、腐りにくい、手触り、などなど……)も様々ですので、「おや?あなたは、もしかして……」というような「出会い」もたくさんあります(笑)

 すなわち、世間的には、どうにも使い道がなかったり、処分に困ったりという理由で「薪」として我が家にやってきたはずなんですが、実際には薪にならずに、もう何年も「別用途」で、欠かせない役割を担っているモノは、我が家にはけっこうあります。

 だいぶ長くなりました。でも実は、これまでが全部「前置き」です(笑)本当に、いちばん伝えたかったことには、ほとんど何も触れていません。ごめんなさい。それは「(下)」編にて。それでは、急激な雨の変化などには充分お気を付けになられまして、次回をお楽しみに!!

 

 ……で、あとは↓戯言です。お読みにならなくても「(下)」編はお楽しみ頂けます。これから先は、愛研大屋の長文をお楽しみ頂けるという、この忙しい時代に奇特な(?)方だけ、どうぞ♪ ここからが長いです(笑)

 

 冒頭写真、もともと「会社が末永く立派であり続けますように」と願いを込めて、看板として長女と見繕ってきた玉切りが、どれほど硬かったかを示す証拠として出しました。だって、薪割り機の刃が、ホンの一部食い込んだだけで、宙に浮いているのですよ??すっごく重たい木なのに!!

 樹皮の様子とかの情報も含めて、いろいろ検証したのですが、たぶん、アカガシじゃないかと思うのです。この木って。

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アカガシ材の特徴には日本産の材木でも堅さで有名な「イスノキ」などに次いでトップクラスに堅いことが知られています。また重さもあり、水にも強いなどの特徴があります。材が緻密なので、木刀やカンナの台、船の材料や山車の車輪など、建築材や器具材として幅広い用途で使われています。 

  (出典:上記記事

 

 これはこれで、素材としてとても貴重品だと思うのですが、あいにく、それを利用できる形態にまで加工する技術は我が家にはありません(現にチェンソー死んだし)。そこで潔く割って薪にしようと電動薪割り機にかけたら、今度は、薪割り機そのものが「オブジェ」と化してしまったというのが、冒頭写真です。

 ちなみに電動薪割り機は、少なくとも私のユーザーさんでしたら必需品扱いです。こいつがないことには「絶対」というほどダメ。マジで。解説記事はこちら。珍しく短くてコンパクトな記事↓

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 同様の解説ですが、私らしく(笑)長い記事↓

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  ↑この二つ目の記事にも少し書いてありますが、電動薪割り機のトルクが足りずに、薪が割れない場合の対処は、樹皮側から少しずつ切り目を入れるように刃を入れていくこと。そこも「ノウハウ」です。ノウハウだいじ。

 で、このアカガシは、板に挽いたことで断面に割れ目もあったので、その割れ目も利用するよう、ノウハウいっぱいで挑戦したのですが……

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 ……それでも「オブジェ」(笑)自分でも珍しかったので、写真に撮って、この記事を書こうと思い付きました。ただ、まあ、それで「出来ませんでした」とか言ってたら「薪ストーブのプロ」としての名が廃ります(笑)

 「最小限の投資で、最大限の効果を」……ええ、もちろん、この一番安いパワー5トンの電動薪割り機でも、最終的にちゃんと目的は果たしましたよ?

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 二つに割れたら、もうしめたものです。あとは……

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 えー?せっかくの、あんな立派な原木を、こんなに細く割っての??と思われる方もいらっしゃると思うのですが、私のユーザーさんであれば、密度の高い、高級な原木ほど、こうしたほうが「美味しい」って、わかってくれているはず(わからないユーザーさんがいらっしゃいましたら、それは私が悪い、私からのご説明が至っておりませんのでご連絡ください)!

aiken-makiss.hatenablog.com

 

 もしも日常の生活道具において「アナログ」というカテゴリーがあるとすれば、樹木という生き物の種類や、個々の状態による「違い」を、五感を使った全体の情報として見極めることで、これまた「炎」という変化の著しい生き物から、いかに上手に、効率よくエネルギーを有効に取り出せるか??という道具が薪ストーブです。これぞ、まさに「アナログ」の最たるものです。

 ご存じの通り「アナログ」は、それ自体、情報量としては膨大です。膨大な情報を活かしきるには、本当に様々なノウハウ、そして考え方が必要です。だから、このブログは、こんなふうに、いちいちやたら長く、盛だくさんになるのです、とか、正当化(笑)

 今の時代、それこそ情報自体は、デジタル空間の中に、本当にいくらでも転がっています。情報の読み方、切り口だとか解釈の仕方だとかがわかっていれば、転がっている情報をつなぎあわせることで、本当に重要な知見(生き延びるために決定的な意味を持つ情報など)を捕まえることもできます。

 ただのノイズと、それと同じように見えるけど実は大切な情報との違いに気付かなければ、今の世の中、ノイズに振り回されて、容易に一生を無駄にすることができます。

 でも、違いに気付いたり、情報をつなぎ合わせるための「視点」や「スキル」、時には本当に大切な情報そのものって、デジタル空間には転がっていません。それは人と人のお付き合いのような、アナログな向き合い方でしか手に入らないもののようです。いつの時代においても。

 つくづく思うのですが、薪ストーブに限らず、たとえば山登りが趣味で、自らの身体で、高さだとか、天候だとか、岩のことだとか、植物のことだとかを知ってて、具体的に生かすことができるとか、「アナログ」の扱いに普段から長けていることって、今の世の中を生き抜くにはとても有効です。

 つまり、デジタルとして単純化できる部分は単純化しながら、アナログならではの扱い方、向き合い方を活かして、デジタルでは掴み切れない部分から得られる利得を最大限に生かす、その訓練のようなことを日々の暮らしで重ねているというのが、今の世の中を生き抜くためには、とても有効だと私は思います。

 要するに、インテリジェンス、知恵、ですね、格好をつけて言えば(笑)……余計なこと、蛇足でございました(笑)それでは、また。お元気で。