薪ストーブをお仕事にしている私ですが、お客さまとしては、本当に素敵な方ばかりに恵まれておりまして、例えば、Webサイトの「私たちについて」でも、映像作家のお客さまの手による素敵な動画を案内させていただいております。
youtu.be で、こちらの動画の冒頭にありますように、自称「旅する薪ストーブ屋」の私は、楽器(トロンボーン)を片時も離さず、いつも、音の鳴らすことのできる環境に拘っており、旅先でも、練習のできる環境を常に探してますが……
珍しく、自撮り。旅する薪ストーブ屋さんは、楽器の練習が欠かせないので、お伺いする約束の時間の前に、こういう場所を探して練習してることがよくあります笑 pic.twitter.com/aculojLN9h
— 大屋@薪ストーブ事業 (@aiken_makiss) 2022年10月18日
そんな私にとって聞き捨てならない「音楽愛好家のための」というお宿、これがまた、なんと私の薪ストーブのお客さまでいらっしゃる方が新規開業なさったというのです!!
www.tsumugu-enne.jp 早速(といっても、なかなか時間が取れなくて、開業から3ヶ月ほど経った11月末ですが(笑))行ってきましたら、これがまた、ホント凄いお宿だったので、ぜひ、リコメンドしたいというのが今回の記事の趣旨です。
いったい、どう凄かったのか??いつもの長文ですが、写真多め、できるだけ具体的にイメージできるよう、また客観的な情報として参考になるようにまとめてみましたので、ご興味ある方、ぜひ最後までお読みくださいませ♪♪
外観は、冒頭写真のとおりで、いわゆる民泊として普通だと思いますが、楽器を描いた表札?お知り合いの方が「お祝いに」と作ってくれたそうです。そのあたりから少し「普通の民泊」とは様子が違ってきます。
中に入って、広い土間と、ガラスと障子が組み合わされた繊細な仕切りが目に入りますが……(下部半分の障子がスライドで上下に動いて、目隠しにも、雪見障子にもなるのです!)
内部全体を見渡して、すぐに「おやっ?」と思うのは、木の香り、そして目にも優しい無垢の木材で包まれた上質な空間。多くの部分が杉(壁)ないし檜(床)の無垢材。そしてこれは少し心得のある人なら気が付くのですが、無垢材でも「フシ無し」、今どき珍しい、すごく選ばれた材です。
お話によれば「フシ無し」は、お客さんの意向というよりは、設計施工をやられた「ウッディライフ」という会社さんが「こうじゃなくちゃ!」と、とりわけ拘って調達してくれたとか……まあ、薪ストーブを入れるのに「私」を選ぶお客さまですから、宿泊施設を設計施工する会社についても、なんか今どき珍しいというか、凄い会社さんを選んだものです。
woodylife.jp 入ってそこまでで、すでに「なかなかない」と思ったのですが、説明のために案内されたテーブル、上質なクロスがかかっていましたが、まず無垢材の椅子がすばらしい。座り心地の違う二種類の椅子。
気になってクロスの下のテーブル本体を確認したら、やはり無垢材の贅沢な板、愛知一宮の名門「木工房すえひろ」という工房の作とのこと。
正直、かなりお金がかかっている印象。この縁音を特徴付けるのは、まず、とにかく空間としてのクオリティーが高いこと。設備の基本的なところに、いちいちこだわりというか美しさというか、何かしら、よく考えられた跡を感じました。
肝心の音楽ですが「いかにも」な防音処理は全くなく、とても自然な感じで生活と音楽が共存できる感じ。それでいて、ここはすごく強調したいのですが、本当に誰にも気兼ねすることなく演奏ができます!!
なにしろ街は遠く崖下に拡がるのみ……ただ、これだけでは、人里離れた山などに「なんとか青年の家」とか、吹奏楽の合宿などで使われるような施設も巷にあります。そういう大きな施設では他団体も同宿しているので、やはり配慮は必要になります。
「縁音」は、貸し切りなので(この時は、私一人だけ!!)、同宿の他グループへの配慮も不要、誰にも遠慮なく、朝から晩まで、文字通り音楽漬け、演奏漬けの時間を過ごすことができます!!
私は相当なフォルテシモが出せる人間ですが、昼間の屋外も含めて、夜の室内でも、本当に思い切り音を出しても「支障なし」、この環境は本当に凄いです。なんでも、この立地を探すために、何年もかけて全国を訪ね歩いたとか。これは、ちょっとやそっとでは真似できない重要なコンセプトだと思います。
そして、私として最も特筆したいのはピアノです。多少かじっただけの人間で、トロンボーンに集中するためにピアノをやめて6年、ピアノが売りの宿ということなので「じゃあ……せっかくだし」と楽譜を1曲だけ持って宿泊しましたが、結果的には、トロンボーンそっちのけで、ほとんどピアノに噛り付いていました。
なにしろ、本当に素晴らしい弾き心地なのです。例えば鍵盤の反応は言うまでもないですが、黒鍵の触り心地なんて、むちゃくちゃ気持ちいい。
私はあまり詳しくないですが、巷のピアノとは明らかに違う気がします。なんでも「ピアノプレップ」という会社さんに頼み込んで入れてもらった&ずーっと維持調律を面倒見てもらっている特別なピアノとのことで、聞いた話では「ピアノプレップ」のオーナーさんは現役の調律師さんでもあり、その昔はスタンウェイの工房で修行なさっていたとか……どおりで!!
私、なんちゃってピアノ弾きではありますが、ともかく印象的だったのは弱音の素晴らしさ。もちろん強いタッチには、芯のあるしっかりとした響きを返してくれますが、優しく弾いた時に、こんなにも穏やかで柔らかな響きを返してくれるピアノを私は知りません。
弱音だけでも、自分が上手くなったように錯覚しましたが、実際には6年のブランクは大きくて、楽譜の終わりが遠くに感じて絶望しそうになりますが(笑)これまた私として特筆したいのがピアノ自体の木目の美しさ。
「ふぅ」と目を上げた時に、すごく落ち着きます。これも、ずっと弾いていられると思った理由かもしれません。無垢の材やオーナーさん自身が塗られた珪藻土に囲まれた空間と合わせて、ピアノ自体が、非常にリラックスした雰囲気を奏者に与えてくれます。
「音楽愛好家のため」を謳うこの空間の価値は、非常に大きくて、吹き抜けの響きも気持ちいいし、どこで音を出しても良いので、好みの響きの場所も探せると思います。部屋ごとに、響きが違うようにも感じました。
どの空間でも共通しているのは、雰囲気が柔らかく、長時間過ごしていられるということです。ここがまた、他にもある「合宿所」とは一線を画する、明らかに抜きんでた価値だと思います。
なんなら冬でしたら炬燵に入って一晩中ダベることのできる部屋まで用意されています(笑)
ただ、人数的には、急な坂道を里まで降りなければ宿の周囲には何もないので、あらかじめ食材を買い込んで持ち込むにせよ、ミニキッチン、トイレ2つ、お風呂は足を伸ばして入れるけど一人しか入れない家庭用……
快適なのは4人まで、多くても6人が目一杯かな?というのが私の印象、よって本当に気の置けない厳選メンバーで、この宿に引きこもって缶詰になるのが、最もお勧めの過ごし方です(周辺には温泉もあるそうですけど)。
食事提供は朝食のみですが、これは……明らかに、お得すぎる内容でした。食材の一つ一つが吟味されていて、「素人の手料理」などと謙遜していましたが、いやいや、これはちょっと手の込んだホテルでも食べられない味という感じで、私、食べ物には、かなりうるさいのですが、大真面目に感心しました(さすが、私の薪ストーブのユーザーさん!!というところではあります(笑))。
たぶん、この朝食に関してはサービス精神だけで、利益のことなど少しも考えられていないと思います(笑)だって、この手作りのジャムなんて、ホント美味しい……ソーセージは地域の銘品を、そのお店までわざわざ買いに走っていただいたとか……まさにご馳走、どれほど手がかかっているか!!
そのように、この「縁音」を特徴付けるのは、空間の素晴らしさのみならず、小技というか……食事の一品一品はもちろん、備え付けのお茶や、あるいはお風呂場の石鹸に至るまで、いわゆるB&Bでよくある範疇を明らかに超えており、どちらかというと1泊4万円以上するような高級宿に近いのでは?と思えるところにもあります。
聴けば、全国あちこち、名門ホテルも含めて泊まり歩いた経験もおありとか……そういう全国の旅を通してオーナーさん自身が「いいな」と思われたモノやコンセプトがしっかり取り入れられているようです。そういう「経験の美味しいところ取り」の部分でも、超お得かもです♪
長くなりましたが、まとめますと、これは「事件」だと私は思います。こんな「施設」は、これまでどこにもなかった。公立でも民間でも不可能だった「音楽漬けで何日も過ごせる、非常に居心地の良い場所」が現れた、音楽愛好家にとってはまさに福音と言えるでしょう。そして、すでにこの「事件」は全国版のネットメディアでも取り上げられ、注目も集め始めているようです。
最後に、しかし、どんな宿にも「欠点」があります。私の感じたことを率直に述べておきます。この宿は、たぶん人を選びます。オーナーさんご夫妻は、とても気遣い気配りの出来る、サービス精神も非常に旺盛な人で、何かと世話を焼いてくれます。もちろん「放っておいてほしい」という意向があれば、それも汲んではくれるはずですが、そもそも「人として合わない」場合は、オーナーさんご夫妻も、宿泊客もお互いに幸せでないと思います。そこは「縁」という名前が入っている意味や「プロフィール」をよく吟味して頂くことと……
あとこの居心地良い空間は、それは実は極めてデリケートな「ピアノさま」を最高の状態で維持するためでもあり、全体が非常に繊細な空間でもあります。非常に柔らかな無垢の節無し杉材の壁、檜材の床、珪藻土の塗り壁、そして何よりもピアノ自体の美しさ……こういったものに価値を見い出して大切にすることができない人には、この宿は絶対にお勧めできません。ここも鉄筋コンクリート造りの合宿所との明確な違いです。
でも逆に言えば、私がここで述べたようなことに魅力を感じる、価値を見出せることが出来る人なら……私は手放しでお勧めしたいです!料金体系は非常に合理的、間違いなくお値段以上、去るときにはもっと長く泊まりたかったという感想を持たれるだろうこと請け合いです。
以上、ときどき「リコメンド」やりますが、心動かされることがないと記事を書かない当ブログ、音楽好きの方には絶対の自信を持ってお勧めできる、全く新しいタイプのお宿の紹介でした!!それでは、また!!