超簡単薪ストーブ調理

当社で販売している薪ストーブで、どんな冬の暮らしが待っているかを紹介しているブログです。  興味を持って頂けましたらぜひお問い合わせ下さい

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【超おまけ記事】「薪ストーブらしいユラユラ炎」が作りやすい薪ストーブとそうでない薪ストーブについて

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 いよいよ、というか今年は「ようやく」でしょうか?寒さも本格化。薪ストーブを楽しみにしている方には「待ってました」というところかもしれません。

 当ブログ、調理のブログではありますが、薪ストーブを巡る「付加価値」についても、色々ご紹介しているところであります。

 ただ、これは個人的な危惧に近いものもあるのですが、薪ストーブの世界は「付加価値」よりも、「それ以前の問題」がユーザーさんの幸せを大きく左右していると思えてならず、こんな動画シリーズを公開したりしております。


楽しく暮らせる薪ストーブの選び方;ポイント5つ ①火がつけやすいこと

 そのように、薪ストーブで楽しく暮らせるか?という視点から考えると、優先順位は相当落ちると私は思うのですが、「炎の美しさ」というのは、間違いなく、薪ストーブの大きな魅力ではあります。

 ただ、モキ製作所というメーカーの薪ストーブユーザーの「あるある」の悩みと言いますか、炎の様子も含めて「焼却炉みたい」と評されてしまうことに対しては、弊社としては「いや!そんなこともないですよ」ということで、代表的機種だった(現在は後継機種移行に伴い生産終了)MD80Ⅱに改造を施した「iGブースターモデル」を世に問うてきたわけです。

 薪ストーブをテーマに、そこらそんじょの薪ストーブ屋さんよりも、はるかに上質な考察や論評を繰り広げる「ガヤさん」による「iGブースターモデル」のレビューがこちらです。

www.makifuyu.com

 ともかく「炎の印象」が変わる、というのが、この改造版の大きなウリでしたが………

 ごめんなさい、この仕事、ある程度長くやっていると見慣れてくると申しますか、「仕掛け」がわかってしまえば、美しい炎も「ある意味当然」ぐらいな感じになってきてしまって。例えばこんな、「iGブースターモデル」に代わる現行機種であるMD70Kissによる「青い炎」でも……


モキ製作所製の薪ストーブ「MD70K」改、MD70Kissによる青い炎のズーム映像

 一度、リンク先の動画↑をご覧になってみてください。そりゃぁ、昔は、感動したものですよ??こういう「青い炎」って。おお!すごーい!!って。

 けど、今は、出そうと思えば、さすがに薪の樹の種類がスギ、ヒノキでは無理ですが、ちょっと薪を見繕って、炎の状態を整えれば、ある意味「いつでも」見られるので、すっかり見飽きてしまって、見ても「ああ、またか」みたいに、特段なんとも思わないというか……

 ちなみに青い炎が際立つのは、ガス化して燃えている最後のほう、炭化して熾火に変わってしまう寸前くらいなので、それまではこんな感じのユラユラめの炎なのですが……


モキ製作所製の薪ストーブ「MD70K」改、MD70Kissのユラユラっぽい炎の例

 こういう「ノーマル」のモキ製作所のストーブとは明らかに違う炎、それはつまり、巷の薪ストーブ的な炎と言ってもいいかもしれないのですが、いったい、どうやってつくっているかというと、答えは実に簡単なことで。

 

 ある程度、蓄熱させて(ないし熾火を貯めて)、空気を絞ってやる(とりわけ空気のスピードを落としてやる)

 

  以上。

 

 あとから説明しますが、薪ストーブ本体に蓄熱すればするほど空気を絞っても炎が保てるので、例えば本体の材質として鋳物とかソープストーンで出来た薪ストーブって、立ち上げるのは大変だけど(蓄熱させるまで至るのが大変)、立ち上げてしまえば空気は相当絞れるので、緩やかな炎の演出なんか相当容易なわけです。

 逆にモキ製作所の薪ストーブみたいな、本体が軽くて蓄熱させるような部分が少ない場合は、熾火がよほど多くない限り、空気を絞ると炎が保てないのが普通です。そこが熾火が少なくても小さな炎が保ちやすいように改造された「iGブースターモデル」なら、ちょっと盛大に焚いて熾火が溜まれば、ごく簡単にこんな感じの炎が。


モキ製作所の薪ストーブ、改造版でのユラユラ炎の例

 ↑ユーザーさんのお宅での「MD80Ⅱ+iGブースター」の納品説明(初焚きとして本体の塗装を焼き切るので盛大に焚くのです)での炎の様子です。「盛大に焚けば」といっても、薪が充分に乾いていないと、蓄熱しにくい本体であるぶん、やっぱり空気のスピードは落とせないので、ただガンガン焚くだけでは、こういうユラユラ炎は出せませんけどね……

 でも、こういうユラユラ炎って、理由さえわかってしまえば「なーんだ」の世界なんですよ、実は。

 すなわち、炎の居場所である炉内に、ある程度以上の蓄熱があれば、熱そのものが炎のボディーの正体ですから、「ラクに」ボディーを維持できることになります。だから炎にとって厳しい「空気が送られてこない」状態であっても、空気が送られてこないからこそ「勢いのない炎」の状態で、つまりユラユラ炎として保てるわけです。

 皮肉な言い方をしますと、人間が「美しい」と思うのは、健康的で元気ハツラツ、勢いのある炎ではなく、瀕死のフラフラ状態の炎なんですね(笑)

 ここで、要素の順番を逆にして説明すると、「炎の居場所」に応じて、「空気が送られてこない」状態でも、炎が保てる「最低限の蓄熱量」というのがあるというわけです。つまり「ある程度以上の蓄熱があれば」って、具体的にどのくらい??……その答えが、薪ストーブの機種、本体の種類によって、かなり異なるということです。

 このあたりの答えの差が「薪ストーブの付加価値」の一つである「炎の美しさ」の差として表れてくるわけですが、そこが排煙処理その他の都合から「もともと」蓄熱させることが運用の大前提の薪ストーブなら、基本的に「炎が美しい」ことになるわけです。だってちゃんと運転するにはそもそも蓄熱しなきゃダメで、蓄熱さえすれば、空気って普通に絞れますから……

 ところが本体特性として蓄熱が必ずしも運転の前提ではない(例えば、立ち上がりの速さがウリの)薪ストーブの場合は、いよいよ「どのくらい蓄熱があれば??」の違いによって、空気を絞ったらすぐに消えちゃう機種と、そうでない機種というものが出てきて、それで「炎の美しさに差がある」ことになります。

 蓄熱が一定以上の量になっていないと、人が美しいと感じるユラユラ炎になるように空気(炎の「命」を保つのに必須)を絞ったら、望む炎になる前の段階で、くすぶるというか、炎が(「命」が)消えちゃったりするわけですが、その蓄熱の量が「炎の居場所」の状態によって異なるというわけです。

 あたかも「人間、最低どのくらい服を着ていないと風邪をひきますか?(あるいは、どのくらい少ないカロリー摂取でも人間は生きていけますか?)」という答えが「そりゃ、どんな場所(部屋)で過ごしているかによるよ……」となるように。たとえ、ちょっと外れてますかね??(笑)ともかく「炎にとって、どんな居場所か」が、薪ストーブ本体の「個性」のいち要素。

 「ユラユラ炎」は、どんな薪ストーブでも作れるのですが、それが作りやすい(もともと蓄熱させることが運転の大前提である、あるいは少ない蓄熱や熾火でもユラユラ炎が作れる)薪ストーブと、そうでない薪ストーブがあって、そうでない薪ストーブにはそれなりの必然性があります。例えばノーマルのモキ製作所の薪ストーブなんて、着火性が凄まじいです(笑)

 さて、現行機種であるMD70Kissは、先代にあたる「MD80Ⅱ+iGブースター」ほどではありませんが、この記事に挙げた動画程度の「炎の美しさ」は、普通に演出できます。何度も言いますが、先代と同様、薪の乾燥状態と、樹の種類に大きく影響されますが……

 でも、これは「炎の美しさのため」というよりも、あくまでも「省燃費での運転を易しくする」という基本性能、少ない薪でも安心して暮らせるように、蓄熱が少ない状態でも、空気を絞って炎を保てる性能を追求した「結果」なのです。結果的にそうなった、というだけの話。

 つまり、なんのことはない、私がケチだった、薪が貴重品というか調達するパワーが乏しかったので、少なくともMD70Kissの炉内デザインとして、より少ない薪でも安心して暮らせることを第一に考えた結果、美しい炎も出せるようになった……という、あくまでも「おまけ」だったということです。ホント「付加価値」。

 そんな具合ですので、「炎の美しさ」、確かに薪ストーブの大きな魅力ではありますが、暮らしやすさよりも優先しなきゃならないほど大きな価値とまでは、言えないんじゃないかな……とか、改造だけとはいえ、曲がりなりにも「薪ストーブの設計」というものに、どっぷり取り組んできた今は、思っております。

  とはいえ、心癒される美しい炎って、私も、やっぱり、大好きではあるので、忙しい中でも、たまにはときどきは見とれますけどね(笑)……どうでしょうね??「MD80Ⅱ+iGブースター」と、日々、普通に暮らされているみなさん??

 なんだか身も蓋もない話になったような気もしますけど、何か参考にでもなればと思って書きました。今さらですが、薪ストーブは、暖かくて、料理が美味しいのが一番大切だと思います。暖まって&美味しく暮らして下さいね♪

 くれぐれもお身体には気を付けて、お風邪など召されませんように。それでは、また。

【おまけのおまけ】

 ……まあ、ぶっちゃけ、炎が特別に美しくなくても、穏やかに燃える薪ストーブの傍に、ネコさんとか和んでいたら、それだけで、なんだかほっこり、満足しちゃいますわな、もう(笑)


穏やかな炎をあげる薪ストーブの傍らに佇むネコ