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暮らしのための薪ストーブのガラス窓は、何故、小さくなくては「ならない」のか?

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 薪ストーブの検討には、多くの皆さんがとても多くの時間と労力をかけられます。そこでは薪ストーブのガラス窓が大きいかどうか?が、昨今とても重視される傾向にあります。

 薪ストーブの業界では珍しい、こんな「調理をメインにしたブログ」を書いている私ですが、炎の美しさというのが大きな価値を持っていることは、この事業を展開してきた中で、あるいは日々の暮らしの中で、沁み過ぎるくらい身に沁みて知っています。

aiken-makiss.hatenablog.com その文脈では、ガラス窓が大きくて炎を大画面で楽しめる薪ストーブが、より優れていると言われるのは、テレビがどんどん大型化し大きいほど価値があると言われることと同様に「常識」であるとも理解しております。

 しかし「常識」が真理真実であるかどうかは別問題です。本記事では「暮らしのための薪ストーブ」においては、窓ガラスはできるだけ小さくしなければならないという原理原則についてご紹介します。

 

1.暮らしのための薪ストーブでは、どうやって炎によりよく働いてもらうか?が本質

 薪ストーブにも目的があります。しかもそれは様々で、単なる暖房器具としての働きにとどまりません。しかし、暮らしのための薪ストーブでは暖房、そして調理が目的の本質であると思います。そのためには如何に炎によりよく働いてもらうか、つまり薪の持つエネルギーを如何に効率よく「利用できる熱に換えられること」を第一に考える必要があります。

 炎によりよく働いてもらうためにどうすればいいか?炎に大きな仕事をしてもらう例として、例えばSL(蒸気機関車)があります。SLを走らせている炎は、どのような形になっているでしょう?――そうです、炉の中に守られています。ガラス窓どころか小さな覗き穴だけで、石炭をくべる時だけ外部への開口が生じます。

 この「できるだけ外部から炎を守ることによって、炎からの熱エネルギーを最大限有効に外部に取り出す」という原則は、暮らしのための薪ストーブでも全く同じとなります。

2.外部から炎を守るという原則から考えた場合のガラス窓の意味

 外部から炎を守るというのは、炎の側から言えば「居心地の良い環境に置いてもらえること」になります。その文脈からすると、炎にとってのガラス窓というのは、どのようなメリットがあるでしょう?

 考えられるのは「よく見てもらえる」結果として放っておかれない、適切なタイミングで世話をしてもらえるというメリットがあるかもしれません。しかし本当のことを言えばガラス窓がなくても適宜状態を確認してもらって世話をしてもらえるならば、炎にとってガラス窓は何のメリットもありません。

 なにしろ炎の正体は熱エネルギーそのものです。仕事をする熱エネルギーにとって居心地の良い環境というのは単純で、「余計なことで」自らのエネルギーが奪われないことです。SLの罐(かま)が、まさにそうなっているように。

 この点、窓ガラスというのは光に形を変えたエネルギーを外部に逃がしてしまい、かつ外部の冷気を熱伝導によって取り入れてしまうため、本質的に窓ガラスが大きいほど熱環境的な居心地としては不利になります。これは人間の住宅においても全く同じです。

 炎の側の欲求として「外の世界が見たい」ということがない限り、炎にとってはガラス窓はない方がありがたい存在であると言えます。

3.大きなガラス窓のある状態で炎に働いてもらうためには?

 ここまで述べてきたように、働く炎からしてみれば窓ガラスは不要でマイナスとなる存在です。つまり大きなガラス窓は、あくまでも「人間側の都合」、炎からは見られるための装置に過ぎず、働くにしても「しんどい」状態となります。

 その「しんどい」状態でも働かなければならないとなると、空気を絞って酸素を少なくされることも、乾燥が充分でなかったり、密度が詰まっていなくてカロリーの乏しい薪も苦手、原理的には無理が出てきます。

 居心地が悪くて働きにくい環境でも、しっかり働いてもらう――その矛盾を解決するための基本的な対処は「薪の量」です。もちろん出来るだけ上質で高カロリーな薪の方が有利です。とりわけ「コールドスタート」、冷え切った状態から働いてもらうためのプロセスで、そのことは顕著になります。

 そのような結果、今度は人間の方に「一回立ち上げるために必要な大量の薪」「年間での薪の準備」という重い負担がのしかかります。ただそれは「大画面で炎が見たい」という欲求が加わっているために、そもそも発生すると言えます。

 よって「暮らしのための薪ストーブ」では、薪の準備のためのコストと労力を減らすという観点から、出来るだけ少ない量の薪で最大の働きを得る必要があるため、窓ガラスは出来るだけ小さい方が正義となります。

まとめ

 本記事では「炎によりよく働いてもらうためには?」という視点から、炎の側から見たガラス窓の意味について述べてきました。

 人間は欲望が尽きないため、炎に対してよく働いて欲しい、美しい姿も見せて欲しいと要求を強めてきました。これをクリアーするために、薪の質や薪の量でカバーしつつ、ハードの発達によって、それも叶えられるようになってきたようにも見えます。

 しかし、そもそもそれは原理原則としては無理のある話です。その無理は、立ち上げ時に大量の薪が必要になる&時間を要することのみならず、結局はハードの壊れやすさや寿命の問題として顕在化してくることになると思います。

 暮らしのための薪ストーブを突き詰めるなら、人間は「少ない量の薪でも、空気を絞った厳しい条件下でも働いて欲しい」と願っているわけで、炎は「出来るだけ居心地のいい空間を作って欲しい」と願っているわけです。

 共に暮らしていくためには、お互いが原理原則に基づく欲求により正直である方が、より無理なく、より末永く、より幸せに暮らせるというのは、これは薪ストーブに限らず「道理」です。

 冒頭写真にあります弊社MD70Kiss、「今どき、こんな窓ガラスの小さな家庭用薪ストーブなんて売れないよ」とよく言われます。しかしMD70Kissは炎によりよく働いてもらう目的のために、炎にとって居心地の良い、働きやすい環境を作るという原理原則を忠実に体現した、窓ガラスの小さな薪ストーブです。

 その結果として、例えば常識外の少ない薪でも、ちゃんと立ち上がり、働ける状態まで持っていけます。

aiken-makiss.hatenablog.com 居心地の良い環境で、しっかり仕事をしてくれる炎、安心してご機嫌で働いてくれる炎の様子をそうっと見守るがごとく、小さなガラス窓から覗き込んで眺めるのは、実はとても心和む、愉しいことです。

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 本質的には暖房器具であるはずの薪ストーブにおいて「炎を鑑賞する本当の価値」があるとすれば、そのような、つまり炎の側に立っているという意味での「炎中心主義」にあるのではないでしょうか?

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 MD70Kissには、そんな「炎中心主義」を保ちながら炎の眺めを楽しむための、様々な工夫が凝らされています。炎を鑑賞するための薪ストーブにも大きなガラス窓をはじめ様々な魅力がありますが、それとは全く異なる方向性を持った「暮らしのための薪ストーブ」の具体例となります。

youtu.be 以上、暮らしのための薪ストーブのガラス窓についての原理原則を述べました。検討のご参考にしていただけましたら幸いです。それでは、また。