超簡単薪ストーブ調理

当社で販売している薪ストーブで、どんな冬の暮らしが待っているかを紹介しているブログです。  興味を持って頂けましたらぜひお問い合わせ下さい

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【楽器から日本社会の衰退が見える?】ヒュッテル(HUTTL)という謎メーカーのトロンボーンの話

 当ブログ、薪ストーブの、しかも調理をテーマにしたブログのはずなんですが、実は「料理の味は調理道具次第」という話がメインでして、もっと言えば、実は道具(モノ)から見えてくる「この世界の真実」をお話ししたくて書いてます。
 今回は楽器、トロンボーンから見える真実の「一つの例」を。何故なら私のことをよく見て頂いているお客さまから言葉がけを頂くことがありますが、私は本当に音楽、トロンボーンを吹くことが好きでして、ものすごく入れ込んでいるからこそ、わかるものってのがありまして……

 トロンボーン吹きとしての私ですが、こちらの動画でも、お客さんのところで時間待ちしている時にちょっとトロンボーン吹いていたのを上手に冒頭で使われています。さすが映像作家さんですが、このように私、仕事で出張している時も、楽器を持っていないことはありません。なにしろ毎日欠かさず練習ってホント大事なことなんです~~

youtu.be で、モノといえばお値段大事ですが、楽器、とりわけ管弦打楽器をやっていらっしゃる方には当然の話ですが、同じ楽器でもお値段が10倍、下手したら100倍とか平気でお値段違います。その値段の違いの理由の大きな要因はメーカー(ブランド)です。そこで例えば楽器買いたいときに何を選ぶか?って時に、このブランドはむっちゃ考慮されます。

 自動車のような複雑なモノなら言うまでもなく、薪ストーブだって、そもそも機構が違うために、ブランドによって「(購入価格あたりの)アウトプットの価値」が全く違うのですが、実は機構だけのお話でもなく「もっと大切な違い」があります。それは、たぶん、こんなブログをお読みになって頂いているあなたさまなら「常識」ですよね?

 なにしろ、ここで取り上げる「細管テナートロンボーン」は機構は超単純で(管楽器の中でも400年間も何も機構や基本構造が変わっていない、こんな単純な楽器もないです)、それでも(購入価格あたりの)価値が全く違う例としてわかりやすい、というのが、この記事で取り上げる理由です。

 さて、ヒュッテル(HUTTL)という楽器のメーカー(ブランド)があります、というか、ありました。トロンボーンも作ってましたが、トランペットのブランドとしての方が有名です。で、ネットではこんな評価がもっぱらです。

ヒュッテルは古いよ!

今から40年くらい前に出回っていたトランペット。

わしもline800持ってたけど、チューニング管がガバチョっと抜けてしまい、微調整出来ないので、オークションに出品した。

音色はそんなに悪くはないけど、楽器屋さんの査定は低く、買い取り価格は2~3千円!

持ってても値打ちないよ!

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ヒュッテル!

持ってましたよ、トランペット!

 

基本的に今のドイツ製トロンボーンはかなりアメリカナイズされていながらもドイツ製のいいところは残す形で作られているため、勤勉なドイツ人の作る楽器はばらつきがあったにせよ非常にハイレベルなばらつきです。

しかしながらそれは特に今油が乗っているメーカーの話であり、残念ながらヒュッテルはその範疇には入ってきません。

このメーカー、人並みはずれて安い値段で日本国内で売られていますが、管の肉厚がかなり厚ぼったく、吹きやすいとはいえないのが20年前の事実でした。

 

さて、話はそれますが西ドイツの金管楽器製作者、タインさんがある旧東ドイツの楽器職人さんに対してこのように言っています。

「高い技術で手を多く掛けた良いあなたの楽器は、その技術・価値に見合った高い価格をつけたほうが良い」

http://www002.upp.so-net.ne.jp/posaune/deutsch/deut04.html より)

実際タインは高いです(バストロ1本日本国内の定価で170万です)し、他のドイツの職人さん達もそれなりに高い値をつけています。

「よいもの、手のかかったものにはそれなりの代価を支払うべき」

これがドイツ国内の一般的な価値に対する考え方であったならばヒュッテルはどうでしょうか?おいくら?

言葉を濁しているように感じられるかもしれませんが、結論ははっきりとここにあります。

参考までに今のドイツの楽器はアメリカ製の2倍近い値段が普通です。

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp ちなみにここでコメントされている「ばらつき」っていうのは、ヒュッテルに限ったことではなく、超品質の安定している国産楽器の雄、ヤマハでもない限り、コメントが言うところより現実はシビアで、今の楽器でも海外製ではごく普通のことでして、たとえばこんな感じです(「太管」かつ機構が複雑なバストロンボーンだから、個体差が出やすいのかもしれませんが)。

youtu.be

 ただ表題で「謎メーカー」としたのは、このヒュッテルというメーカーが、ばらつき云々以前に、大昔(1970年代)に廃業していて、情報も非常に少ないからなのです。こんな年表一枚しか見当たりません。

https://www.brasshistory.net/Huttl%20History.pdf より

 そして今、確実に言えるのは、この「ヒュッテル」ブランドの楽器の取引価格は、上記コメントにもありましたが、むちゃくちゃ安いということです。中国製の安いブランドの新品楽器とか入門用で売られていますが、それよりも安いかも……

 でも、それって「ネットあるある」の単なるイメージのせいなんじゃないか?と私は思います。というのも、今は手放してしまってありませんが、私はトロンボーンの奏者でもずっとクラシック用の「太管バス」か「太管テナーバス」という楽器を使っていたのですが、ジャズをやってみる羽目になったとき、ジャズといえば「細管テナートロンボーン」でしょう、ということでヒュッテルの「LINE700」を実際に使ったことがあるのです。片足突っ込むには本当に安く買えて好都合だったので。

youtu.be ウチのバンドにしては動画の評価が高いのはソリストさんのおかげだと思いますが、トロンボーンも我ながら良い仕事してます。向かって左から2人目の髪の毛ないのが私、1番トロンボーンを担当してます。

 この動画で、私が実際にヒュッテル使っていることの証明になるのは、冒頭写真3枚目にも挙げましたが、ヒュッテルのトロンボーンは、楽器の後ろの方の「バランサー」という部品に非常に外観上の特徴があるからです。

 映画「スウィングガールズ」で「本仮屋 ユイカ」さんが吹いていたのがヒュッテルのトロンボーン(LINE800という説が強いようですがLINE700とLINE800は、ほぼ同じ外観なのでわかりません)ということは有名ですが、バランサー見ればヒュッテルであることは一目瞭然なのです。

http://gachapin99.blog48.fc2.com/blog-entry-101.html より

 ちなみに、もしご存じなければ、映画としては、すごく名作ですよね♪

coconala.com その「ちょっと足を突っ込むために買ってみた」時から、ヒュッテルは値段の割にはむちゃくちゃ良い楽器だと思っていましたが、今思えば単に吹き方が出来ていなかったのだと思いますが、本格的にジャズトロンボーンも追求してみたくなった時、楽器を替えれば上手くなるかも、と思ってヤマハの中でも「ジャズ用テナートロンボーンの最高傑作」という評判の名高い楽器(高かったです~~)に乗り換えてしまいました。

 でも、それから結構時間が経ったこのたび、自分が入れ込んでいるトロンボーンの知識を活用して、ちょっと商売的な腕試しがしたくなって(簡単に言えば、です。実際にはもっともっと深い事情がありますが長くなるので割愛m(__)m)「なんかよくわからない楽器(現状渡しジャンク)」として叩き売りされている楽器を、モノとしての価値を写真など限られた情報からでも見極めて買うことにしたですね?

 わけわからない楽器と言われていても、見る人がみればわかるというか、本当に価値のあるモノなら、ちゃんと手入れして、正当な説明評価を与えれば、価値に見合う価格で売れるんじゃないかという趣旨です(単なる転売ヤーではありませぬm(__)m)。そうして買ったのが傷や凹みはあるけど、使用頻度と劣化は非常に少なそうなヒュッテルの「LINE800」だったのです。

 買った「LINE800」は、さすがジャンク扱い、まともに動くようにするには凄く苦労しましたが、なんとか普通に使えるようにして、「ちゃんと良い音しますよ」というのは、実際の演奏の比較が良かろうと、まず自分の愛機である「ヤマハの歴代細管テナートロンボーンの中での最高傑作」(2000年代)の音と

 商売的な腕試しのために買って、普通に使えるまで手を入れてから、実際に売りに出したヒュッテル「LINE800」(1970年代)の実際の音を、比較してみたのです。

 Twitterアカウント持ってらっしゃる人なら、このリプライに、さらなる演奏比較が連なっているのをお聞き頂けますが……私、この実際の演奏比較を出してから、すっかり考え込んでしまったのです。なにしろ

 

吹いてる感覚としてヒュッテルの方が気持ちよく響くし、スマホの簡易録音ではあるけど、「どんな音が鳴っていたか」として聴いてても私の感覚ではヒュッテルの方が圧勝

 

 ネット上の通説ではヒュッテルのトロンボーンなんて本当に安物扱いで、比較したヤマハの名機とは比べ物になりません。確かに「ヒュッテルは意外と良い音する」というのは経験的にわかっていたことだけど、個体差、ばらつきがあるにせよ「ヤマハの歴代細管テナートロンボーンの中での最高傑作」を、実際ここまで圧倒できるものか??

 結論として、自分の感覚を信じて、売りに出していた「LINE800」の出品を取り消して(我ながらちゃんと売ってたので、たぶん売れたと思います)、急遽、次回コンサートのメインの楽器としても採用することにしたのですが、調べてみると、このヒュッテルを高く評価しているのは、決して私だけではなくて。

少々長文です。雑談枠ですが最後に少し質問に答えていただければと思います
今日部活で1年生の楽器体験用のものをメンテナンスしていたんです
その時、ボロボロの楽器ケースを発見しました。
中身はなんとトロンボーンのHUTTL(ヒュッテル)のテナーでした(型番までは分かりませんでした……)
HUTTLってご存知ですか?昔ぼちぼちトランペットとかあったドイツのメーカー。
タインほどの1流ではない楽器メーカーなのは周知の事実ですよね
ですが、吹いた時に結構いい音したんですよ!
少なくとも学校にあったYAMAHAのテナーよりはいい音したんですよね
調整したら案外使えそうでしたね、
楽器オタクの私としては決して1流ではないにしろ数十年前の楽器なので楽器オタクの血が少々騒いでしまいました(笑)
そこでボロボロのケースで誰も使わないと確信があったので、意を決して顧問の先生に「この楽器いくらで売ってもらえますか?(震え声)」と言ったところ、案の定、顧問からは「公有財産のなんたらには凄い手続きがいるから厳しいかもね(笑)」
分かりきってはいた事ですが少々悔しかったですね

ウチの学校では絶対あのテナーは使わないしこれからも使われることはないと思うんですよ!
オタクの僕からしたらなんとしても僕の手に収めたいんです、笑

だから、難しい手続きを踏んで(どんなものかはわかりませんが)楽器を手に入れてみたほーがいいですか?
←これが質問です

あと、HUTTLドイツ管なだけにまあまあな楽器でした!という感想です
昔とは大分違いますが、今のタインやクロマトのドイツ管吹いてみたいなぁ(笑)と思った次第です。

見てくれてありがとうございました✩_✩)ヾ

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今まで使っていたYAMAHAが3本その他3本の計6本を使い分けています。最近ドイツの古いヒュッテルを借りて吹いたら音の響きに幅と艶があり、楽に高が音が出たのにはビックリしました。
YAMAHAの低価格帯の楽器は高音が出にくいですね。ブラバンで一生懸命練習している方はオークションで出ている安いヒュッテルを吹いてみてください。ヤマハの安い楽器はわざと高音が出にくい作りになっているのではないかと疑いたくなりますよ。

ヒュッテルはドイツのメーカーでYAMAHAより歴史が古く吹き込むとYAMAHAとの音の質の違いに驚きます。力量のある方が吹き比べるとヤマハの薄っぺらい音質に愕然とすることでしょう。

オールドヒュッテルと対抗するにはYAMAHAの8以上の高価な価格帯で無ければ対抗できないと感じました。

ヤマハは吹きやすく、それなりの音が出るが味がありませんね。オールドNIKANの方が音に深みがあります。YAMAHAの高価な楽器は必要ないと思う方や吹き比べた方の意見をお待ちしています。ベストアンサーではなく楽器の分かる方の回答にアンサーのお礼を差し上げます。

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp なお、ここで言われている「YAMAHAの8以上の高価な価格帯」とは、ヤマハトロンボーンでは品番は3桁ないし4桁の数字で表されて頭文字に位置する数字が増えるほど高級とされる中で、800番台や8000番台は、今のヤマハの最高級機、フラッグシップモデルということです。

 また、ご自身メインの楽器として使って、さらに改造して、日野照正さんに「会社やめて職人になれば」と言われたと仰る方も見つけました。

www.roy.hi-ho.ne.jp 要は、それなりに腕に覚えがある方が「ヒュッテルいいよ」と評価しているなのです。それでも最近の中古楽器の取引を見ている限り、ずーっと安定した安値なのがヒュッテルです。値段の割に良い音がする、というのは間違いないと思いますが、私が実際に吹き比べてみてショックを受けたのは、上記の方が仰る、まさに、この部分。

吹き込むとYAMAHAとの音の質の違いに驚きます。力量のある方が吹き比べるとヤマハの薄っぺらい音質に愕然とすることでしょう。

 何しろ「予備機」を持ってしまうくらい、素晴らしい楽器だと思っていたのです、私がヒュッテルとの比較に使ったヤマハの2000年代の機種は。実際、プロの評価も、現行2020年代のYSL-897Zという機種に比べて、こんな感じのべた褒め。

blog.goo.ne.jp ヤマハは品質安定だし、このように評判が良いから「ヤマハの歴代細管テナートロンボーンの中での最高傑作」として、この機種は市場価格も高いです。でも、実際の音では私の感覚では全く逆に超安価なヒュッテルの圧勝です。

 思うに、もしかしてこの市場価格は、いかにも本邦らしい「思い込み」に「イメージだけ」に起因するものなんじゃないかと。或いは個体差で、たまたまこの「LINE800」が良かった??……いや、あるだろうけど、ここまで圧倒だと、大きな問題でもないような気がします。

 そもそも何故ヒュッテルの価格はこんなにも安いのか?何故メーカーとしては敗退、潰れてしまったのか。私なりに考えてみて、一つは「造りが安っぽいのかな」と仮説を立ててみました。が……超単純なテナートロンボーンで楽器の造りがわかる部分、ヒュッテル「LINE800」です。

 そう安っぽい造りとも思えないのです。何しろ、世間で評判のヤマハの「ヤマハの歴代細管テナートロンボーンの中での最高傑作」だって、こんな感じ。比較のために同様に撮影。

 溶接方式で「ラグレス」(自転車乗りだけの言い方なのかな)が違いはありますが、高級感的には違いがあるとは思えませんでした。

 それよりも気になったのは、私が「素晴らしい」と思っていた、日本のモノづくりがまだ元気だった、この2000年代のヤマハ(正確には2002年から2012年販売)よりも、もっと大昔、このLINE800と同時代のライバルだった1970年代(正確には1969年から1975年販売)のヤマハの「YSL-651」という機種の方が、圧倒的に造りが高級だったという事実です。

 写真では似たように見えるかもしれませんが、手にした感じはかなり違います。いや~~……確かに、こんな造りの楽器が「ライバル」では、ヒュッテルは、コストダウンのためのチープ感がありありで、勝ち目なかったんじゃないかなと。限られた情報で信憑性はわかりませんが当時の「LINE800」の価格は10万円ほどで、10万3千円の値札がついたままだったヤマハ「YSL-651」と同じくらいだったようですし……

 ちなみに1970年当時の大卒初任給は4万円ほどですので、当時のヤマハのジャズ用最高級トロンボーン「YSL-651」は、大卒初任給の2.5ヶ月分でした。

大卒初任給|年次統計

 一方、2000年代販売当時のヤマハの当該楽器の実売価格は20万円ほどだったので大卒初任給の1ヶ月分です。そのあたりでメーカーとして「お金のかけ方」がそもそも違うでしょう?と言われればそうかもしれません。刻印一つ取っても、これだけの差があります。

https://x.com/wohya/status/1762682194659848677?s=20

https://x.com/wohya/status/1762682194659848677?s=20

 写真、どっちがどっちかなんて言うまでもないと思います。私が本当に考え込んでしまったのは、日本を代表する(というか世界向けでは唯一の国産)楽器メーカーであるヤマハとしての製品の位置付けで、これらは「ジャズ向けトロンボーンのフラッグシップモデル」として「全く同じ」ということ。すなわち、日本社会は、1970年代から2000年代にかけての30年間だけでも、これだけ、豊かさを失ってしまったのかと。

 もっとも厳密には、本邦だけの問題でもありません。モノづくり共通の世界での課題として「いやらしい素材」を使うことができなくなりました。私も公害・環境の分野でプロとしてずっと仕事してきたので実感するのですが、製造現場では「人間の健康に悪い物質」(それを「いやらしい素材」と言います)を使うほど、品質において優れたモノを作ることができたのです。論理的に考えて同じ価格(大学初任給比)なら当時モノの方が有利です。

www.fujifilm.com たとえば楽器に深く関わるのはメッキですが、メッキをきれいに(頑丈に)かけるためには素材表面をいかに完璧に脱脂するか?が極めて重要で、そこで絶大な性能を発揮したのが「トリクレン」(トリクロロエチレン)でした。トリクレンは今や、ほんの1滴地面に溢しただけで一大事ですが、1970年代は、まだまだ使い放題でした。その結果

↑これは同じく1970年代のジャズ用のトロンボーン(上の写真のYSL-651とは兄弟モデルの「太管テナートロンボーン」YSL-641)で、本当に長年(40~50年)使い込まれてきた個体の実際のメッキの劣化(剥がれ)具合ですが

↑これは、たった最近6年ほど使っただけの近年のトロンボーン(フランスの楽器です)のメッキの劣化(剥がれ)具合です。私自身も楽器やっててそれなりに長いので、1990年代以前の楽器と現在の楽器の差(傷みやすさ)として、国産・外国産を問わず実感しています。

 それはともかく、ヒュッテルとの比較で正直「惨敗」という、それまで愛機にしていたヤマハの響きにショックを受けた私は「それでは」と、さらに執念で、同じく2000年代の海外メーカー(アメリカのKINGという、ジャズ分野では代表的なメーカー)でも、比較対象とされていたモデルとも実際に吹き比べてみました。販売開始年代が重なって(2007年~)、当時の実売価格も20万円ほどと同じものです。

 結果は……仔細は省略しますが、私の感覚ではKINGの圧勝……orz ヒュッテルとKINGは結構いい勝負でした(ビッグバンドで使うならヒュッテルという私判定)。いや、私、ヤマハ好きなので、ヒュッテルに引き続き、同時代&同価格帯のKINGにも敗戦というのは、ショックがさらに追い打ちと申しますか………

同じ経験が何度かあります。一つ目は中学生の頃に楽器倉庫の奥に眠っていたヤマハYBL3210R。刻印はヤマハでしたが、インペリアルのそれと殆ど同じものです。とにかく吹いた瞬間からその辺の楽器とは違う何かを感じました。言葉では表せません。少なくとも今のゼノなんかより(ゼノ使いの方すいません)ずっと良い楽器に感じました。

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp 「インペリアル」というのは、ヤマハの1970年代の300(ないし3000)番台のモデルが名称を引き継ぎましたが、旧ニッカンつまり「日本管楽器製造」時代の高級グレードの楽器のことです。つまり古い時代のヤマハは今のモノに比べて別物だと。

 色々調べてわかったのは、同じヤマハでも、1970年代のヤマハトロンボーンの偉大さは、海外でも一目置かれているところで、様々な年代の楽器を集めて比較した企画でも、ヤマハで唯一取り上げられたのは1970年代の「YSL-651」でした。

youtu.be また「YSL-651」は、以下の定評ある楽器店の店主による機種解説動画でも特に取り上げられ、次のように紹介されています。

YSL-651は、長年にわたって様々なデザインが試されてきたヤマハトロンボーンにおける初期の作品の例である。 1960年代後半から1970年代にかけて製作されたYSL-651は、クラシックなアメリカの細管テナーからインスピレーションを得ており、近年の細管テナーと比べて非常にユニークな対比を示すものである。

youtu.be また、この動画でさらに印象的だったのは「細管テナートロンボーン」でも、2000年代から、さらに20年ほど進んだ現在ヤマハのフラッグシップモデルには「YSL-891Z」と、ジャズに特化した「ヤマハの歴代細管テナートロンボーンの中での最高傑作」の後継機種である「YSL-897Z」があるのですが、コメントの中で、現在YSL-651に相当するモデルがヤマハにないことを嘆く意見に対して

実際、897Zは、より人気のある891Zの管を細くしたバージョンだ。このモデルでプレーしている人はあまり知らないが、私の経験では、プレーは891によく似ている(少し小さいだけ……)

と、店主は2020年代ヤマハに関して、あまりにそっけない回答を返していることでした。イメージだけでなく実際の比較検証などもしっかり行ったうえでの回答です。

these two trombones were no different!

youtu.be 要するに、日本がまだ元気だった2000年代の「ヤマハの歴代細管テナートロンボーンの中での最高傑作」ならともかく(絶賛まではいかないが評価はそれなりに高い)、ヤマハの細管テナートロンボーン2020年代モデルは、フラグシップモデルでも、全く相手にされていないというか……

 ましてや、こんな動画まで。ヤマハの細管テナートロンボーン2020年代モデルのフラグシップYSL-891Zは、プラスチック製のトロンボーンと「同じ」だと言われてしまう始末orz

Putting a pBone against a YSL Yamaha Trombone! They are the same!

youtu.be 何度も言いますが、1970年代のヤマハトロンボーンは、本当に評価が高かったのです。なにしろ世界の超一流プレイヤーが、それでアルバム作るくらい。歴史的なモダントロンボーンの奏者であるカーティス・フラーが、このアルバムで使用している楽器は写真から判断して間違いなく当時のYSL-641です。

youtube.com 私は以前から、1970年代までの日本のモノづくりには凄く力があったと(残念ながら今はそうではない)、当時の製品そのものから感じており、ブログ記事に書いたりしておりましたが……たとえばこんな記事。

aiken-makiss.hatenablog.com 同じ現象が楽器でも……orz と。まあ、楽器の一つに過ぎないトロンボーンの中でも、機構が複雑な「バストロンボーン」や「テナーバストロンボーン」でもなく、最もシンプルな「テナートロンボーン」で、ジャズを中心に使われる「細管テナートロンボーン」という楽器に限定した話ではありますが……

 でも私、やっぱり思うんですけど、私たちの日本社会は、何か、途中から方向を間違えたのではないか?と。高度経済成長でお金を稼いだのは良いんだけど、その「次の一手」というか、使い道を間違えたというか……しかもかなり長い年月をかけて、間違えたまま、ずっと進んできてしまったのでは?と。

 仕事の対象となるお客さんに、モノやサービスを通して、とにかく「豊かさ」を提供したいという思いを大切にして育てるよりも、仕事を提供する自分たちとしてのリスクを下げたい、自分に降りかかるリスクばかりを恐れる社会になった結果、「価値が生み出せなくなった」のではないでしょうか。

 日本社会が世界に誇るような価値を生み出していた、その当時の楽器であるYSL-651やYSL-641に付属していた「トロンボーンガイド」に掲載されていた写真とキャプションは、こんなものでした。

 ヤマハトロンボーンを社会に届けることに対する当時の誇りと思いが感じられて、なんとも言えない気持ちにさせられます。その思いは、今なお色褪せることない響きと、それに対する評価として輝き続けています。上記比較動画に寄せられたコメント。

I'm very happy you included the Yamaha YSL 651. A very niche classic Yamaha you don't hear talked about much. One of the best trombones I've ever played.

youtu.be

 私たちは、今、とても長い年月をかけて至った、非常に根深い「残念な状況」に直面しているのだと思います。ただ、そうなった理由(リスクばかり恐れる社会になってしまった)を知り、改めていくことで、長い年月はかかるだろうけど、ひっくり返していけると思うのです。

 もし正しい方向性があったとすれば、その一つは、モノの耐久性を上げる、寿命を増す方向に製品を進化させることであろうと思います。私の扱っている薪ストーブのメーカーであるモキ製作所も、一部に迷走は見られるものの、総じてそういう(社会に圧倒的な豊かさを提供する観点から製品耐久性を高めてきた)メーカーであると思います。少なくとも発明者、現会長である茂木国豊氏は、そういう人です。だから私はこのメーカーの事実上の専業です。

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aiken-makiss.hatenablog.com

 以上、私の今回の楽器を巡る話をしましたが、これは一例に過ぎません。「実は、ずっと前から、そうだったのか……orz」という残念な現実と、だから今、こんな残念な状況になってしまっているんだという話を、私たちはこれから、様々な切り口において、もっと山のように目にしていくことになると思いますが……

youtu.be でも、だからこそ、いちいち負けてなどいられないのです。少しでも人生が楽しく、世の中が素敵になるように頑張りましょう。私も、もちろん頑張ります!!

 それでは、また。お元気で!