超簡単薪ストーブ調理

当社で販売している薪ストーブで、どんな冬の暮らしが待っているかを紹介しているブログです。  興味を持って頂けましたらぜひお問い合わせ下さい

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【番外編】薪ストーブで一番大切かつ、恐ろしいこと

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出典:未乾燥薪、合板を燃焼させた薪ストーブ煙突掃除 : ログハウス きたぐにからの家

 

 当地方も梅雨入り、しばらく前からすっかり暑い日々になっておりますが、いかがお過ごしでしょうか?こう暑くなってきますと、ちょっと背筋が寒くなる話をしても大丈夫かと思いまして、最近、私が問題意識を深刻化させていることについてお話を。

 「毎日の暮らしに使える薪ストーブ」の普及をミッションとしているプロとしての私が、仕事の上で一番注意していることは、実際の暮らしの場面で薪が準備できないなどで、ユーザーさんが薪ストーブが使えなくなること……ではありません。

 これはユーザーの皆さんご自身におかれましても一番注意して頂きたいことでもあるのですが、なんというか、あまりに「当然」過ぎて、強調して来なかったという反省が正直あります。使いにくくて使わなくなるなら、その方がずっとマシなのです。毎日の暮らしで使える薪ストーブ、その使い続けた結果として

 

 家そのものが、燃えてしまうこと

 

これ以上に恐ろしいことはありません。これは、もちろん設置する側のプロの責任として、最大限配慮しなければならない一丁目一番地でして……最近もこちらの記事に書きました。

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 でも、断熱二重煙突を用いて施工して、薪ストーブの使用経験もあって、それで安心かというと、先冬にはファイヤーサイドさんの公式ページで、薪ストーブのある暮らしについてのエッセーを連載していた作家さんが、煙突が原因でご自身の家を全焼させるという事故もありました(現在、元記事は削除されています)。

twitter.com ただ、こういう「煙突から火の粉が出る」とかは、いきなり起こるものでなく、「きっかけ」として考えられることは、自らの経験、私のユーザーさんから伺うご経験、他のユーザーさんについての話や「中の人」として聴くことから考えていくと……

 

 煙突トップにおける外側スリットの「詰まり」(閉塞)

 

 どうも、これが、前兆として相当大きいのではなかろうか?と、考えられるのです。すなわち

 

煙の多い(炎にとって厳しい状態での)燃焼

煙突内部でのタールの蓄積

とりわけ排気ガス温度が急激に冷やされる煙突トップ部でのタール液析出と冷却固化

煙突トップ外側スリットの物理的閉塞

ドラフト性能の顕著な低下

さらに炎にとって厳しい状態での燃焼

煙の多さがさらに(かつ急激に)悪化

煙突内部でのタール蓄積の急激な増加

煙突内部に引火、煙突が火柱化(煙道火災)、屋根に引火するくらいの火花放出

 

 これ、実際に薪ストーブの経験がないとイメージ難しいかもしれませんが、薪の高温の炭化過程で生じるのが「煙」であるわけですが、その正体は、木材を構成していた「生の高分子」です。気化した高分子が中空で燃えるのが二次燃焼と言われるプロセスです。

 その二次燃焼が薪ストーブの本体内で充分に行われることなく、煙突に放出されて冷却された場合、高熱により気化していた「生の高分子」はネバネバした液体に戻り(いわゆるタール)、そしてさらに冷えて固体に戻ります(ピッチ)。高分子が固まった物体は、一般にはプラスチック樹脂として身近に存在します。

ja.wikipedia.org

 固体に戻る過程においては、正確には重合反応による高分子化の進行もあるそうですが、とにかく大事なのは、煙の中に存在する不完全燃焼成分、つまり「生の木材分子」は、最終的に「固体」になるということです。冷えると固い樹脂となり、衝撃で割れて、ガラス状の破片のようにバラバラと落ちます。

 冒頭写真のように、いかにも液体のように見えますが、引用元記事をご覧いただいたらわかるのですが、固体として固まっております。それが、二次燃焼できなかったことにより生じた薪の気化成分の「成れの果て」の姿です。

 ですので、煙突の掃除において「パウダー状」のススしか落ちてこなければ素晴らしいのですが(冷やされても液体として析出する高分子が排気中に存在しない)、「フレーク状」の堅い破片が混じっていれば、それは、ある程度は不完全燃焼を生じさせているということです。

 そんな場合に、特にご確認を頂きたいのは、煙突トップ外側スリットの状態なのです。煙突トップ外側スリットは、紙片や葉っぱなどがドラフトで飛ばされて詰まるということは、第一にあるのですが……(名門メトスさんの解説。豆知識Q1を参照)

metos.co.jp

 紙によってだけでなく、この「フレーク状」の析出物によっても閉塞を生じます。とりわけ『乾燥の不充分な薪』のみならず、『太い薪』などを『じっくり燃やしたい』という嗜好性のある方に、この煙突トップの閉塞を生じさせやすいという傾向が、私のユーザーさんの中でもはっきりと見えてまいりました。

  私のユーザーさんには、すでに全員に郵送にて注意喚起をさせて頂いたところです。

 

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 私のユーザーさんにおいては、煙突の設置プランを検討する際に、薪ストーブだけの都合を言えば、第一推奨が「トップに気軽に触ることができること」としておりますが、とりわけ壁抜きプランの場合には、触れない場合が多いです。それでも「目視確認」が容易である状態は、必ず確保しております。
 この写真例も、遠方からになりますが、双眼鏡などを用いれば、煙突トップ外側の「スリット」の状態が目視確認可能という事例です。こうしてみると、閉塞しているかどうか、よくわからないかもしれませんが……

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 「フレーク状」になっている硬い破片を、この例ではデッキブラシでしたが、除去した後と比較してみると、スリットが閉塞していたことがおわかり頂けるかと思います。もちろん除去作業では、屋根の上などに「バラバラバラ……」と固い物体が落ちる音がします。

 

 煙突トップ外側のスリットの閉塞は、煙道火災への最短距離

 

ですので、もちろん、そうなっていないかどうか、このオフシーズンの間に、ぜひ、と申しますか、必ず、煙突トップ外側スリットの状態を目視確認をして頂いて、必要な処置や(外側からブラシを当てたり)、次のシーズンでは燃焼が改善できるように、薪の準備、燃やし方などを工夫頂きたいのですが……

 

住宅密集地で薪ストーブを使えますか? -東京都三鷹市で住宅の新築を計- その他(住宅・住まい) | 教えて!goo

 

 そもそも、こちらの「ベストアンサー」になっております答えにありますように、あるいは本記事冒頭の引用写真から容易に想像できますように

煙突の周囲何メートルかにススが飛び散り真っ黒になり、細かい灰が車などに堆積したり

 という事態になってしまいますと、そのうち、苦情が来て薪ストーブを使えなくなる事態は十分に考えられますので(家を燃やしてしまうよりは、まだずっとマシですが……)、繰り返しになりますが、事態を甘く見ることなく、少なくとも煙突トップ外側スリットの閉塞状態を確認し、対処と自省をなさって頂けましたらと。

 で、そんな皆さまの参考になることを願いまして、恥を晒して、我が家です。この1シーズンで、煙突トップがどうなったか。ちなみに煙突掃除をすれば、フレーク状の破片も少しは混ざるなという感じです。

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 我が家、その気になれば、すぐに煙突トップに直接ブラシを当てることができるようになっておりますので、まあ、運用としては「真面目な薪ストーブ屋さん」からすれば、相当「あり得ない」「薪ストーブ舐めてる」ことをやっております。

 公表しているだけでも……なんか、当ブログの中でも人気記事になっちゃってますが

aiken-makiss.hatenablog.com とか、前回の

aiken-makiss.hatenablog.comなど、真面目な薪ストーブ屋さんから見たら充分噴飯ものだと思うのですが、これは「公表しているものだけでも」ということで、実際には、もうちょっとエゲツナイこともやっておりますが……ここでは到底書けません。お許しください。

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 ……で、その「悪行の数々」への反省と申しますか、ユーザーさんの見本には到底ならないような悪いことをやったと、いっぱい自覚があるものですから、この煙突トップ外側のスリットの確認って、実はイヤでイヤで、ずっと放置状態だったのですが……

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 覚悟を決めて見てみると……ま、良いとは決して言えないけど、思っていたほど、酷いということでもないかなと。

 自分がどれだけ横着というか、酷いことやっていたか、よく知っていますから。「あれでも、この程度で済んだか!!」と、ホッとした、というのが正直なところです。これは場合によるもので、やっぱりストーブ本体の性能によるところも大きいと感じます。

 ですので、ひとつ、この我が家の煙突トップの閉塞状況を、1年未満の乾燥期間の薪を用いて、主暖房及び主調理台としてモキ製作所MD80ⅡのiGブースターモデルを毎晩、毎朝使用、年間使用量として2.5立米程度使用した実例として、ご参考になさっていただき(必要でしたらご連絡を!)、来シーズンに向けて備えて頂けましたらと!!

※※モキ以外でしたら、毎晩毎朝使用の場合、煙突への煤やタールの付着リスクは、我が家のようなものでは済まないと思いますので、ご注意を……※※

 

 薪ストーブは、楽しいです。魅力も、一緒に暮らすことによって生み出される価値もとても大きいです。でも、自動車と全く一緒です。扱いを間違えると、あっという間に、周囲や、自分自身を傷つけ、時に命さえ奪う凶器になり得ます。

 薪ストーブを扱う人間には、一定の資質、知性、品性が求められるものだと、つくづく思います。それは、常に自己修練を心がける姿勢に帰結していくと感じます。

 私も、もう50を目前にして思うのですが、人生、幾つになっても修行です。偉そうなことなんて少しも言えた身ではありません。でも、失敗を率直に反省し、また共有していけば、少しは世の中のお役に立てることもあろうというものです。

 私はプロの身なのに適切でないかもしれませんが、とりわけネットの時代、ユーザーの皆さんに申し上げたいのは「真実を知り、己を知り、共に成長してまいりましょう」ということです。

 今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。