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超簡単薪ストーブ調理

当社で販売している薪ストーブで、どんな冬の暮らしが待っているかを紹介しているブログです。  興味を持って頂けましたらぜひお問い合わせ下さい

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薪ストーブの炉内で、塩分の多いものを焼いても(燃やしても)大丈夫なの??

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 週明け、月曜日でございます。寒さが厳しくなったり、緩んだりの繰り返しで体調を崩しやすいですが、今週もお身体には気を付けて、お仕事など頑張りましょう。

 さて平日は怒涛の毎日更新の当ブログですが、実はちゃんと、前回記事から今回記事に至る「必然性」、流れを意識して書かれているんですよって、前回申し上げました。

aiken-makiss.hatenablog.com

 その記事でも「この人からのご質問があって……」ということで触れました、今度、弊社のユーザーさんになって頂ける方ですが、その、とても心暖まる柔らかいお人柄とは裏腹に、本当に鋭いご質問を頂きます。「そんな話、よくご存じで……一体、どこからお聞きになったのでしょう??」と驚くような突っ込んだご質問です。並大抵の薪ストーブ屋さんでは、充分には答えられないのでは?と、いつも思います。

 で、当ブログ。前回、改めて「燃やすことで生じる水分」の兼ね合いから干物を扱いましたが、そこでまたまたグッドタイミングで頂いていたのが、表題のご質問。塩分との兼ね合いです。我が家の薪ストーブで、炉内で干物を焼いているのを見て「驚いた」とおっしゃるのです。

 そうなんです。我が家、塩分多いものも炉内でガンガン焼いています。冒頭写真、ブリの塩焼きです。富山産天然ぶり。これまた、むちゃくちゃ、美味いです~~~♪♪

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 この美味しさを語り尽くすのが、当ブログの「本来あるべき姿」かもしれませんが……でも、このタイミング。せっかく頂いたご質問に今お答えせずに、いつお答えしましょうか!!(笑)ということで、本日のテーマは「薪ストーブと塩分」でございます。

 調理からはちょっと離れるかもしれませんが、薪ストーブと長い間付き合う上で、絶対に他では聴けない、体系的な知識を得られると思いますので、ぜひお付き合い下さい♪

  さて、炉内で塩分の強いものを焼いて良いのか?という問題は、要するに、薪ストーブの炉内で、例えば、塩分を多く含む可能性のある木材(海水に浮かべてストックされていた外材などが言われています※)などを燃やして良いのか、という問題と本質的に同じだと考えられます。

 

※追記:いったん、こう書きましたが……森林インストラクター的な感覚では、健全な木材、つまり、建材としての物理的性質を有する状態での木材が、いくら海水に浸されたところで(海面貯蔵)、乾燥こそすれ、塩分が中に浸透していくって、あまり考えられないのです。なので、ただの「外材」を燃やす分には問題ないと思うのですが……一方流木など、特に水に沈むようになったような木材としての物理的性質を失ったものは、海の流木なら避けた方が良いです。いずれにせよ「ストーブがボロボロになった」という言説もあるので、なんでもオッケー、なんでもダメという話ではないと思います。

 

 このたびご質問を頂いたのをきっかけに、私も改めて調べてみましたが、巷では、どうやら、この問題にちゃんとした理論的根拠を踏まえて見解を示した人って、いないのかな?という状況です。

 薪ストーブを扱う「中の人」でも意見は二分されております。明らかにダメだと言う意見と(下から二番目の質問中に言及があります)

www.kobatake.co.jp

 いや、そんなの、水分さえなければ平気だよ、という正反対の意見があります。

ecoecomakistove.blog119.fc2.com

 そこで、これまた「中の人」の一人であります、私、株式会社愛研 薪ストーブ普及販売事業担当 大屋としての見解は??と申しますと………

 

 ふふふふふ……

 

 よくぞ、聞いてくれました!!!この質問にお答えするのに、薪ストーブ業界で、私以上に、「適切な」人間は、まずいないでしょう!!!

 

 なぜかといいますと、弊社「株式会社愛研」ですが、「本業」は薪ストーブ屋さん「なんか」ではありません(社内で、私、超肩身狭いです。会社の営業利益に全然貢献できていないので(笑))。環境測定、つまり公害の検査が本業です。その本業に関係して、世の中には薪ストーブ「なんか」よりも、はるかに過酷な使われ方をする「燃焼装置」があるのをご存知ですか??

 そうです。廃棄物焼却炉、いわゆるゴミ焼却炉です。弊社、株式会社愛研は、廃棄物焼却炉から排出される有害物質の測定の測定を本業としている会社であり、私、大屋は、社会人になってからは煙突登ったり、産廃屋のおっさんと喧々ゴーゴー議論したり、曲がりなりにもその道のプロフェッショナルでございます(笑)

 基本的に薪ストーブと同じように、鉄と耐火レンガから構成され、それこそ「何でも燃やす」廃棄物焼却炉。そこで、じゃあ、塩分の影響ってどうなの?って言いますと……

 結論から言いますと、塩分が廃棄物焼却炉に与えるダメージは、本質的には「むちゃくちゃ大きい」です。

 普通の人は、塩分があると「錆びる」って、単純に思われるかと思います。単に「錆びる」という問題だけだとすると、これは廃棄物焼却炉のプロというよりも、某国立大学工学部化学科(分子素材工学科)出身という私の経歴の方が生きるのですが、上記リンクで後者の方が指摘されるように、本質的には「水分」の問題なのです。

 水分と酸素さえなければ、鉄は、塩では錆びません。鉄表面に塩があることで、水分を呼び、空気中の酸素が水があることで溶け込み、鉄から電子を奪って水酸化物イオンになるという酸化還元反応が起こって錆びるのです(ただし塩分は酸化被膜を破壊して金属素地を露出させることにより、錆を加速させる作用があります)。

 ……ごめんなさい、平易に、平易に(笑)ともかく、大切なことは

 

 塩分に関しては、まず、水分にご注意

 

 ということで、「外材と塩」を書かれた方の意見はその部分で正しく、たとえば炉内の灰が、なんか湿気を帯びるようなことがもしあれば、それはすぐに対策を打って頂きたいのですが(サラサラに乾いている限りは大丈夫です)……

 世の中の廃棄物焼却炉が、塩分によって大きなダメージを受けるのは、単に錆びるということではないのです。「塩分を燃やす」ことによって、初めてその問題は発生します。どのように問題が発生するのか「本当に本当のところ」は、実はよくわからないのですが、

 

 塩分を燃やす→「揮発性塩素」が発生する→「塩化水素」(つまり「塩酸」)として設備を腐食する

 

 このように言われています。でも、塩分が直接ガス化して石英ガラスのような超頑丈かつ不活性な素材も腐食するという話もありますし、そもそもどうして塩分を燃やすと「揮発性塩素」が発生するのかも、詳細なメカニズムは「説」に留まるようです。

 ともあれ、事実としてわかっていることは、燃やすものの中に塩があると「塩化水素」すなわち「塩酸」が発生して、廃棄物焼却施設を激しく傷めるということと、あと、燃やすものの中に硫黄分が含まれていると「揮発性塩素」の発生が明確に増加することです。

 つまり、生ごみは、燃やしてはダメです。食べ物には、必ず塩分と硫黄分が含まれていますから「揮発性塩素」がバンバン発生します。「揮発性塩素」が発生すると、ともかくまずいです。

 「揮発性塩素」の発生に関して、かなり、どうでも良いトリビアを。ダイオキシンって覚えていらっしゃいますかね?今から20年ほど前に、社会問題化しました。私の職業人生のスタートは、実はダイオキシン騒動に完全に彩られておりました。いい人生です(笑)

www.facebook.com あそこで、塩素、塩素って言われて「塩化ビニル」が悪者として一気に追放されたのを、詳しい方なら覚えているはず。

 それって、実際のところ、どれほどの意味があったのでしょうか??

 実際のところ、「塩化ビニル」など塩素系樹脂は、燃やされると、確かに「揮発性塩素」をモロに増大させます。しかし「せいぜい」3倍程度なんですって。生ゴミとかと比較して。一方で、当時問題となったダイオキシンは、今の管理レベルの100倍とか1000倍とか、そんな勢いでした。

 ですので、塩化ビニルをいかに追放しても、生ゴミを燃やす限り「揮発性塩素」は何分の一くらいにしかできないし、一方で「揮発性塩素」が一定量あれば必ずダイオキシンは発生しますから、ゴミを燃やす限りにおいて、目標管理レベルの100倍とかだったダイオキシン対策としては、いったん発生したものを「完全燃焼」などで処理するしか、最初から「答え」はなかったんですよね……

 で、話を戻しますと、「揮発性塩素」は木材でも、紙でも発生するそうです。量としては生ゴミの10分の1とか、そんなレベルらしいですが。要するに、モノを燃やすことによって「揮発性塩素」が炉や煙突に悪影響を与える可能性って、ある程度は宿命的で避けられないものです。いくら頑張っても「どうせ」ゼロにはできません。

 ……これって、調理のブログですよね?(笑)すみません。昔取った杵柄だったので、調子に乗り過ぎました。結論、いきます。箇条書きで。

 

  • 塩分を「明らか」「多量に」に含むものは、燃やすのを避けた方がいいです。「揮発性塩素」が大量に発生し、本体も煙突も激しく傷める可能性が高いと思われます。
  • 一方で、燃焼に伴う「揮発性塩素」そのものは決してゼロにはできないので、また硫黄分との兼ね合いもあるので、木材や紙を普通に燃やしたり、干物から焼き汁が滴り落ちるぐらいなら、特段、気にしなくて良いです。
  • でも、肉片とか野菜くずとか、食べ物の残渣を「そのまま」燃やしてしまうのは、明らかに塩分と硫黄分の両方を含まれたものを燃やすことになって、「揮発性塩素」発生の条件を整えてしまうので、極力避けた方がいいかもしれません。
  • また、冒頭写真のように魚を焼くにせよ、炉内で、直接塩をふったりするのはやめた方がいいでしょう(笑)
  • あと、塩分が燃えると全て「揮発性塩素」になるということはなく、灰の中にも当然塩分のままで残留しますので、灰が湿気るようなら、これは錆を呼ぶ可能性があるので、取り除いておいた方が良いと思います。

 

 ……いかがでしたでしょうか??

 

 どうです??冒頭質問に、こんなふうにお答えすることができる「薪ストーブ屋」って、他には、まずいないでしょう??(笑)

 そんな、どうにもならない自慢をしまして、今回の記事は終わりです。次回こそ、調理の話に……というか、目指せ、1500字以内!!今回は4246字でした。お付き合い下さいまして、誠にありがとうございました。

 パリッパリの理系がお届けする、「薪ストーブを科学する」連載(違)、次回も乞うご期待♪

 なお、この記事を書くにあたりましては、以下の文献を大いに参考にさせて頂きました。挙げさせていただくと共に、厚く御礼を申し上げます。

 

  • 岩永宏平,大沢正明,土橋正二郎(1983):都市ごみ焼却炉における塩化水素発生要因について 第2報 ゴミ中の揮発性塩素量と発生塩化水素の関係,日本環境衛生センター所報,No.10,84~93
  • 渡辺信久(2015):ごみと塩素の関わり,2014年度 大阪ごみ減量市民交流会 基調講演資料